Research Abstract |
摩擦現象の構成式としての表現は,先ず,剛塑性体として実現され,さらに,接触表面間に仮想弾性バネを仮定するペナルティ法による弾塑性体として達成された.しかし,これらにおいては,すべり降伏面の内部を弾性域としているので,その内部の接触応力の変化による塑性すべり速度や接触応力の繰返し負荷によるすべり変位の集積現象を表現できない.これらは,Drucker(1988)の塑性構成モデルの分類に従えば,古典摩擦モデルと呼び得る.一方,本論文の第一著者は,降伏面の内部における応力速度による塑性ひずみ速度を表現し得る非古典塑性モデルとしての下負荷面モデルを提案した.さらに,本論文の著者らは,下負荷面の概念に基づいて,弾性すべり状態から塑性すべり状態への滑らかな遷移を表現し得る下負荷摩擦モデル(subloading-friction model)を提案した. 静止している物体にすべりを生じさせるとき,先ず高い摩擦抵抗が現れ,これは静止摩擦と呼ばれている.その後,摩擦抵抗は,すべり変位の進行とともに低下して,ある一定値に漸近するが,この停留摩擦は動摩擦と呼ばれている.これらは,古くから広く知られている事実である.その後,しばらく放置して再びすべりを生じさせると,静止摩擦が復活して,初期すべり時と同じ特性が再現されることが明らかにされている.以上は,広範に観察される摩擦現象の基本特性とみなし得る.静止摩擦抵抗と動摩擦抵抗の相違は数十%に及ぶことも有るので,静止摩擦から動摩擦への遷移過程および静止摩擦への回復現象の定式化は,工業設計上,極めて重要であるが,今なお,合理的な定式化はなされていない. 昨年度,静止摩擦から動摩擦への遷移過程を塑性変形によるひずみ軟化現象とみなし,また,静止摩擦への回復現象を粘塑性変形による硬化現象とみなして,これらを表現し得るように下負荷摩擦モデルを拡張することにより,時間依存性下負荷摩擦モデル(rate-derendent subloading-friction model)を定式化した.今年度は,数値実験により本モデルの基本特性を具体的に示すとともに,種々の実測結果との比較を行って,本モデルの高い予測特性を実証した.
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