Research Abstract |
栄養塩を考慮した分布型流出モデルを東京湾沿岸流モデルに統合するために,分布型流出モデルの開発を行ってきた.本研究で用いている分布型流出モデルは,地下浸透,地表面付近の不飽和浸透,表面流,そして浅水流方程式による河川流が組み込まれているが,栄養塩モデルを組み込んで計算を行う際の計算機容量を考慮して,不飽和浸透,表面流,河川流のみを考慮することとした.本助成金により研究を行う前に,モデルを典型的な都市河川である鶴見川に適用し,よい再現性を得ることができることが示されていた.そこで本制度を利用して,モデルのより詳細な特性を検討するために,計算に用いるグリッドサイズを変更することにより,流出特性がどのように変化するかを検討した.その結果,グリッドサイズが大きくなるに従い,山地斜面の平均勾配が減少し,総河道長が減少することが確認され,平均勾配はピーク流量の変化に大きく影響し,総河道長は平均流量に大きく影響していることが解明された.現在は,栄養塩のモデル化のために,モデルの検証に適した北海道の沙流川への適用を試みているところである. また,分布型流出モデルの結果を沿岸流動モデルに適用するためには,分布型流出モデルと沿岸流動モデルを結合するための感潮域モデルが必要であることを示すために,感潮域モデルの導入による沿岸域モデルにおける影響評価を,保存量である塩分を用いて行った.その結果,感潮域特有の河口部における潮汐による運動量の発生が,湾内における塩分濃度の決定に大きく影響していることが分かった.その影響度は,感潮域上流端における河川流量が小さいほど大きくなることも示された.今後,この結果を利用して,感潮域における塩分の浸入形態までを再現できるモデルを構築し,分布型流出モデルと沿岸流動モデルをより高精度に統合できるモデルの作成を行ってゆく予定である.
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