Research Abstract |
市民の価値観が多様化する中で,今日の都市インフラ整備の最も重要な役割は,生活の質(QoL)への貢献であり,様々な利害関係者の公益を実現するものでなければならない。QoLは市民の充足度に基づく評価尺度であり,本年度は,1)QoL評価の考え方を居住街区評価への適用のためのQoLアセスメント手法の改良,2)アウトカム・インディケータの選定,3)居住地区・街区評価のための基礎データの収集,4)QoLに基づく地区・街区格付け制度の設計を実施した。 1)については,街区レベルでの都市住環境に関わる各種要因を,(1)安心安全性,(2)経済活動機会,(3)生活文化機会,(4)空間快適性,(5)環境持続性の5つの要素で分類し,各要素を代表する評価指標(アウトカム・インディケータ)の整理を行った。そこで取り上げた広域社会資本整備の評価用のインディケータ体系にヒューマンスケールでの即地的なインディケータを加え,居住街区評価のためのQoLアセスメント手法への改良を行った。街区評価のための即地的インディケータとしてはコミュニティの安全性および街並み・景観等の公共的価値に関わる指標を考慮した。 2)のインディケータ選定は,指標の絞り込みの過程で地域像をより具体的に認識し積極的な市民参画を促すという意義を有する。本年度は,その選定のために,指標のわかりやすさおよび重要度に関する意識調査を実施し,ワークショップの開催により市民との協働によるインディケータ体系の発案を行った。 3)のデータ収集は,中心市街地の衰退と急速な郊外化,および線引き制度の廃止に伴う広域的な土地利用変化が予測される高松都市圏を対象として実施した。インディケータの現況値を得るために,対象地域内の街区レベルでの土地利用データ,交通・ライフラインを含む社会資本整備状況,都市サービスの供給および財政動向等に関するデータの収集を行った。これにより各地区・街区の相対的位置づけを明確にした上で,市民の充足度状況に関する意識調査(充足度調査)を実施した。 4)の格付け制度は,公共的価値すなわちコミュニティの安全性,快適性,街並み,景観,自然の豊かさ,自然災害等のリスクなどを評価対象とするものである。既往の不動産鑑定評価手法等のように単一の評価尺度で空間の良し悪しを評価するのではなく,地域や住民の特性を考慮できる評価の仕組みとしてQoLに基づく格付けの考え方を整理した。
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