2006 Fiscal Year Annual Research Report
民家・民家再生・民家型構法の比較からみた木造構法システムにおける伝統概念の継承
Project/Area Number |
17560562
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀江 亨 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (70256832)
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Keywords | 民家 / 民家再生 / 民家型構法 / 伝統概念 / 架構 |
Research Abstract |
1.長野県の「本棟造り」土着民家である重要文化財曽根原家、嶋崎家、堀内家の実地調査を行った。また降幡廣信氏の設計による再生民家3棟に関して、間取りと架構の新旧変化の実地調査を行った。内業として各事例の再生前後の架構と平面を図面化し、比較した。土着民家の比較から「本棟造り」において象徴ともいえる「雀踊り」などの外観装飾はむしろ後世に出現したもので、「オエ」(茶の間)を中心とした平面構成と1間ごとに縦横に架かる梁組が古形より継承されている要素であることがわかった。一方、再生前後の比較では(1)格子梁の残存状況、(2)2階通路の設置方法、(3)接客空間の変化、(4)私室の増設状況の各点から考察した結果、「おえ」の格子状の梁組を残し吹抜けの縦空間を見え掛りにすることと、階上の通路空間の見せ方が、伝統概念を継承する上で最も重要な設計要素であることが知られた。 2.異なる建築家による再生民家として安藤邦廣氏による茨城県つくば市の事例と、中野晶子氏による東京都青梅市の事例を選び、これらの実地調査と設計資料の検討を行った。再生前後の架構と平面を図面化した結果、屋根の形状および材料、2階居室の増設、各部屋の梁組と吹き抜けの関係などの点で相違があることがわかった。 3.民家型構法については、現代計画研究所の設計事例を、柱通し構法前期型・梁通し構法・柱通し構法後期型の3タイプに分け、材積表と架構図を作成し、部材構成と木材使用量を比較した。その結果、部材種類数と羽柄材の割合において各構法の相違が顕著に表れ、また竣工年が新しいほど木材使用量が増加していた。民家型構法は、骨太の構造材を用いた架構設計において民家の伝統概念を継承しているが、中間支持部材を省略する点は民家とは異なる設計思想が補完されていることがわかった。
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