Research Abstract |
昨年度の研究で,Fe-B-Si-Nb金属ガラスにB_2O_3フラックス処理を施すことにより,低透磁率,低保磁力,低鉄損という特異な,そしてチョークコイル用磁心材料として理想的な磁気特性が発現することを明らかにした。今年度は,低透磁率化のメカニズムの解明を行った。 磁化過程の解析から,析出結晶相の磁壁のピンニングカは数mT程度と比較的弱く,20〜50mTの領域では回転磁化が支配的であることが分かった。従って低透磁率化の原因は,析出結晶相の磁壁のピンニングではなく,ガラス相中に結晶相が析出することにより生じた内部応力による応力誘導磁気異方性であると考えられる。 過去の研究で示した通り,B_2O_3フラックス処理は本来,結晶化を抑制する効果を持つが,本開発材料ではフラックス処理により結晶化が促進されるという,従来とは正反対の結果となっている。この原因を明らかにするために材料の組成分析を行った結果,フラックス処理による合金組成の変化は無く,組成の変化によりガラス形成能が低下したのではないことが分かった。そこで材料の内部構造を調査した結果,通常の結晶化ではあり得ないε-FeSi相と思われる結晶相が析出していることが分かった。これより,フラックスと溶湯の化学反応により,ε-FeSi相の不均質核生成サイトとして働く化合物相が生じたものと考えられる。 本研究の成果により,フラックス処理により核生成を制御し,新奇な結晶相/ガラス相複合材料を開発できる可能性が示され,磁性材料のみならず,他の機能性材料や構造材料への応用展開も期待できる。
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