2006 Fiscal Year Annual Research Report
バンドギャップ励起に基づく希土類イオン付活型蛍光体の創製と発光機構の解明
Project/Area Number |
17560598
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
稲熊 宜之 学習院大学, 理学部, 教授 (00240755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝又 哲裕 学習院大学, 理学部, 助手 (90333020)
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Keywords | 蛍光 / ペロブスカイト / バンドギャップ / 希土類 / 発光 / プラセオジウム |
Research Abstract |
母体物質のバンドギャップ間の電子遷移に対応する励起エネルギーを利用した希土類付活型蛍光体を創製し、発光機構の解明をおこなうことを目的とした。本年度は、結晶構造と発光特性の関係について系統的に調べるために、Ca_3Ti_2O_7:Pr^<3+>に加え、Rイオンの違いによって構造が連続的に変化するペロブスカイト型酸化物R_<1/2>Na_<1/2>TiO_3:Pr^<3+>(R=La,Gd,Y,Lu)を合成し、結晶構造解析および光学特性の解析をおこなった。 得られた結果を以下に示す。 Ca_3Ti_2O_7:Pr^<3+>の赤色発光の蛍光寿命は、数十μsecから100μsecのオーダーと比較的長いものであり、バンドギャップ励起による発光過程は、電荷移動過程などのエネルギー伝達過程を含んでいることが示唆された。また、発光量子効率は約1%であり、発光阻害因子の解明および制御が今後の課題である。 ペロブスカイト型酸化物R_<1/2>Na_<1/2>TiO_3の構造解析の結果、La^<3+>,Gd^<3+>,Y^<3+>,Lu^<3+>の順にイオン半径が小さくなるにつれて、AイオンとO間の平均距離およびTi-O-Ti角度が減少することがわかった。一方、母体のバンドギャップは増加し、これはTi-O-Ti角度の減少とともにハンド幅が狭くなったことに起因する。R_<1/2>Na_<1/2>TiO_3:Pr(R=La,Gd,Y,Lu)すべての試料において610nm付近の強い赤色発光(Pr^<3+>:^1D_2→^3H_4)が観測され、La^<3+>,Gd^<3+>,Y^<3+>,Lu^<3+>の順にその発光ピーク波長は増加した。これはA-O間の平均距離の減少に伴いPr-O間距離も減少し、共有結合性が増加したことに対応する。さらに拡散反射スペクトルと励起スペクトルの比較により、励起過程は母体のバンドギャップの電子遷移に対応し、R=La,Gd,Y,Luの順に吸収端(330-350nm)が短波長側にシフトすることに伴い励起ピークも同様に短波長側にシフトすることがわかった。得られた結果からこの系ではPrのサイトシンメトリーよりもPrの基底準位および励起準位と母体の価電子帯および伝導帯のエネルギー端の相対的なエネルギー準位が発光特性に強く影響を及ぼしていることがわかった。
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