2005 Fiscal Year Annual Research Report
有機化合物の結晶核発生メカニズムの解明と医薬のナノ結晶を製造するための晶析操作
Project/Area Number |
17560664
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大嶋 寛 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20112526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 幸一 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70315977)
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Keywords | 結晶核形成 / 核発生 / 粒径制御 / 結晶多形 / マイクロ波 / 晶析 / 有機化合物の晶析 / ナノ医薬 |
Research Abstract |
有機化合物結晶の核発生メカニズムを解明する目的で、医薬リーディング化合物BPPI(C_<16>H_12Cl_2F_3N_3O_2)の結晶多形析出挙動と溶液構造との関係について検討した。その結果、BPPIのメタノール溶液からはB02形結晶が、エタノール溶液からはB01形結晶が析出することがわかった。それぞれの結晶についてX線構造解析を行い、結晶中の分子配列およびコンフォメーションを決定した。また、BPPIのメタノールおよびエタノール溶液についてNMR析を行い、BPPI分子の会合状態およびコンフォメーションについて検討した結果、結晶核が発生する前に、析出する多形結晶の構造に類似したコンフォメーションおよび会合構造が溶液中で既に形成されていることがわかった。したがって、溶液の構造を制御することが核発生の制御に重要であると結論した。また、L-アラニン結晶の核発生が系内に既に存在する結晶から受ける影響について静置過飽和溶液を用いて検討した結果、新たな核は結晶の近くで発生し、順次周囲に広がっていくことがわかった。晶析槽内の結晶に影響を受けて新たな核が発生する、いわゆる2次核発生に対する従来の理解は、何らかの結晶種が既に存在する結晶から生産され、それが溶液中を移動して新たな結晶として成長するというものである。しかし、本研究で得られた実験結果は、従来の2次核発生に対する理解とは異なり、核発生が溶液構造を通じて連鎖的に誘導されることを示唆するものであった。また、溶液にマイクロ波を照射することによって、核発生のタイミングを制御できることが示唆された。以上の知見は、ナノ結晶を製造するために必要な結晶核発生の同調および過飽和の瞬時の消費の2つのプロセスを同時に達成する晶析操作の開発に寄与するものである。
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