2005 Fiscal Year Annual Research Report
希少種チビトガリネズミのユーラシアにおける遺伝構造と集団構造
Project/Area Number |
17570009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大舘 智志 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (60292041)
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Keywords | チビトガリネズミ / チトクロムb / コントロール領域 / マイクロサテライト遺伝子 / 地理変異 / 遺伝変異 |
Research Abstract |
チビトガリのDNA分析用のサンプルを博物館等の保存標本と自らが採集した標本から採取した。DNA分析に利用可能な標本数は、東部フィンランド15、ノルウェイ1、ロシア・カムチャッカ1、ロシア・マガダン州4、ロシア・沿海州5、ハバロフスク1、サハリン2、国後島1、北海道サロベツ11、北海道根室5、北海道浜中町2、同・嶮暮帰島5、であった。 以上のサンプルを用いて、ミトコンドリアのチトクロムb遺伝子の配列を決定した。系統解析によると、ユーラシアの東部と西部ではかなり遺伝的に異なっていることがわかった。またサハリンの個体は北海道産のものと近いこと、沿海州、マガダンのものはそれぞれ独自のクラスターをつくることがわかった。さらに興味深いことに、北海道産のものは域内で遺伝変異がほとんど見られないのに対して、フィンランド産のものは同じような面積から採集したのにもかかわらず、大きな遺伝変異が見られた。 また、ミトコンドリアのコントロール領域は、下流にあるhypervariable領域が地理的変異の分析に使用可能であることがわかった。この領域は配列の最初と最後の部分は変異が少なく、その間に繰り返し領域をはさんでおよそ1,500-2,000bpぐらいの大きさがあった。また頻繁なindelがみられるのでアライメントの取り方に工夫が必要であり、現在やり方を検討中である。とりあえずギャップを無視して系統樹を作成すると、北海道とフィンランドの個体群は明らかに異なった系統に属しており、チトクロムbと同様に後者における遺伝変異は大きいことがわかった。 マイクロサテライト遺伝子については、現在どのプライマーが利用可能であるか調査中である。おそらく今まで発表されたプライマーで分析が可能と思われる。しかし、一地域からのサンプル数が少ないと期待されるので、それを補うためにできるだけ多くの遺伝子座を検索している。
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