2005 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ-褐虫藻共生系の多様性とストレス耐性に関する研究
Project/Area Number |
17570023
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
日高 道雄 琉球大学, 理学部, 教授 (00128498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 慎美子 琉球大学, 理工学研究科, 研究員 (10398307)
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Keywords | サンゴ / 褐虫藻 / 共生 / 白化 / ストレス応答 / 活性酸素 / 光化学系 / 高温ストレス |
Research Abstract |
本研究では、サンゴ-褐虫藻間の共生関係の多様性と共生体のストレス耐性の関係を明らかにすること、そして白化の機構を解明することを主な目的とし、下記の実験を行った。 1.サカサクラゲを用いた白化感受性決定要因の解析 サカサクラゲでは、褐虫藻をもたないクローンポリプに様々な遺伝子型の褐虫藻を感染させることができる。この実験系を用いて、褐虫藻の遺伝子型と白化感受性の関係を解析した。その結果、異なる宿主由来の褐虫藻をもつ遺伝的に等しいサカサクラゲは白化耐性が異なることが分かった。このことは、褐虫藻の生理的性質が共生体の白化耐性を決定することを示唆する。 2.解離細胞を用いた白化機構解析のための実験系の開発 サンゴの解離細胞を飼育すると球形の凝集塊(tissue ball)を形成する。tissue ballは、繊毛運動により回転運動を行うが、ストレス処理により運動の停止、凝集塊の崩壊が起こる。このことを利用し、様々な褐虫藻密度をもったtissue ballをストレス処理することにより、tissue ballの生存期間と褐虫藻密度の関係を調べた。その結果、高温ストレス下では、褐虫藻密度と生存期間の間に負の相関関係があることを見出した。このことは、ストレス下で褐虫藻が共生体にとって有害な物質を産生していることを示唆する。高温ストレスによるtissue ballの生存期間の短縮が活性酸素除去剤により緩和されることから、この有害物質は活性酸素であることが示唆された。 3.活性酸素産生の条件 「光化学系が機能しているにもかかわらず炭素固定回路が損傷された褐虫藻は活性酸素を産生しやすく、サンゴ白化を起こしやすくする」という仮説をたてた。暗黒下での高温処理がアザミサンゴの褐虫藻排出を促進することを見出したが、この時褐虫藻の光化学系も炭素固定回路(電子伝達速度)も低下していなかった。一方、中強度の光条件下では高温ストレスは褐虫藻の光合成系を損傷するが、褐虫藻の排出は誘引しなかった。現在のところ、上記仮説はまだ検証されていない。
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