2005 Fiscal Year Annual Research Report
食物連鎖を通じて被食者から捕食者へ伝播する氷核物質の同定とその機能解析
Project/Area Number |
17570024
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
田中 一裕 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教授 (00316415)
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Keywords | オオヒメグモ / 氷核物質 / 季節性 / 地理的分布 / 耐熱性 / 食物連鎖 / 低温生物学 |
Research Abstract |
クモの体組織の凍結開始温度(SCP)を決める氷核物質は、餌虫に由来すること、摂食にともなって餌虫からクモに伝わることがすでに明らかになっている。今年度は、この氷核物質の正体を明らかにする一環として、その季節消長、地理的分布および耐熱性について野外調査と室内実験を行った。氷核物質の季節消長および地理分布は、さまざまな季節にさまざまな地域から採集した餌虫(ワラジムシやコオロギ)をクモに食べさせ、そのSCPを測定することで推定した。その結果、氷核物質は、1年中いつでも環境中に存在すること、北は北海道から南は沖縄まで日本中どこにでも存在することが明らかになった。また、野外から採集した昆虫の多くがこの物質を保持していることもわかった。これらの事実は、氷核物質が、自然界に普遍的に存在していることを示唆している。熱処理を施した餌虫とそうでない餌虫を食べたクモのSCPの比較から、この氷核物質の活性が80℃以上の高温下では低下することを見出した。このことは、この物質が何らかのタンパク性のものであることを示唆している。現在、これらの結果をまとめた論文を投稿中である。 餌虫体内のどこに氷核物質が存在するのかを明らかにするため、餌虫(ワラジムシ)の消化管をとりだし、これを別の餌虫(コオロギ)を介してクモに食べさせ、そのSCPを測定した。その結果、氷核物質が少なくとも餌虫(ワラジムシ)の消化管内に存在することが明らかになった。このことは、餌虫が摂食を通して環境中から氷核物質をとりこんでいることを示唆している。この予備実験の結果は、短報として日本蜘蛛学会誌に投稿した(Tanaka 2005)。
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Research Products
(1 results)