2005 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼・湿地生態系の制御機構を大きく変化させる要因の抽出と変化のプロセスの解明
Project/Area Number |
17570026
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高村 典子 独立行政法人国立環境研究所, 生物多様性研究プロジェクト, 総合研究官 (80132843)
|
Keywords | コイ / 霞ヶ浦 / 外来種 / 生態系改変 / 隔離水界 / 栄養塩循環 / 沈水植物 / エコシステム・エンジニア |
Research Abstract |
本研究では、IUCN侵略的外来種100に記載されているコイ(飼育型)の生態的影響を明らかにすることを目的として、隔離水界(2m×2m)を用いて、コイによる底泥撹乱と栄養塩排出が栄養塩循環および生物群集に与える影響を評価した。霞ヶ浦湖岸にある国土交通省の実験池(木原水友園)に、隔離水界を設置して野外操作実験を行った。 実験処理区はコイの有無、底泥へのアクセスの有無(「無」では水中に張ったネットでアクセスを遮断)の2要因からなる4処理区を設けた。また実験開始前に全ての処理区に沈水植物を植栽し、コイの導入区には20cm弱のコイを1尾投入した。2ヶ月の実験の結果、底泥へのアクセスの可否にかかわらず、コイがいるだけで沈水植物は著しく減少し、水中にはシアノバクテリアが優占し透明度が低下した。またコイの底泥撹乱による懸濁物の増加も観察されたが、その効果は弱かった。このことから底泥撹乱を介した効果よりも栄養塩排出(尿)を介した効果が大きいことが明らかになった。一方、他の生物群集に与える影響として、ワムシ類(小型動物プランクトン)の増加やベントス(特に貧毛類)の減少がみられた。これらはコイの導入に伴う間接効果と考えられた。 以上の実験結果から、コイはエコシステム・エンジニア(Ecosystem engineer)として栄養塩排出や摂食などの直接効果、間接効果を通して、生態系を大きく改変することが明らかになった。またコイの導入は、沈水植物の卓越する透明度の高い安定系から植物プランクトンが優占する濁度の高い安定系へのカタストロフィック・シフトを引き起こすことが示唆された。コイの生態的影響は強いと考えられ、今後不適切な放流を見直す必要があると考えられる。
|
Research Products
(6 results)