2006 Fiscal Year Annual Research Report
夏鳥ホトトギスの托卵に対する留鳥ウグイスの時間的エスケープに関する研究
Project/Area Number |
17570028
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
濱尾 章二 独立行政法人国立科学博物館, 附属自然教育園, 主任研究員 (60360707)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 恵介 立教大学, 理学部, 教授 (00213348)
|
Keywords | 行動学 / 進化 / 生態学 / 動物 |
Research Abstract |
留烏であるウグイスは繁殖を早く開始することによって夏鳥であるホトトギスの托卵圧を軽減している可能性がある。この時間的エスケープを含むウグイスの対托卵戦略に関する調査を、東京都三宅島で行った。 ウグイスは4月上旬から繁殖を開始したが、6月上旬にホトトギスが定着すると大半の巣が托卵を受けた。育雛に必要な餌生物である昆虫類の発生量をトラップを用いて調査したところ、昆虫類の増加する時期はウグイスの育雛期とほぼ一致していた。また、他の留鳥性鳥類とウグイスの繁殖開始時期を比較したところ、今年度のデータからは大きな違いは見出されなかった。 これらのことは、ウグイスにとってホトトギス渡来以降は托卵による繁殖失敗を被りやすいが、渡来前に産卵できる1〜2回分の繁殖では托卵の影響を受けずに雛を生産することができることを示している。ウグイスの繁殖時期が托卵への対抗手段として進化したとする仮説は今年度のデータからは支持されなかったが、留鳥であるため繁殖開始が早いことはウグイスにとって托卵のコストを相対的に小さなものにしていると考えられた。 剥製提示実験では、ウグイスはホトトギスの剥製に警戒・攻撃行動を示した。ウグイスは托卵に訪巣するホトトギスを直接排除することで托卵を免れようとしている可能性が考えられた。 平成19年度は、広くウグイスの対托卵行動全体に研究を発展させるため、繁殖開始時期の調査の他、ウグイスが卵排除を行わない理由の解明(卵擬態を明らかにするため卵の吸光度を測定)、平成18年度にはデータ不足で解析できなかった巣場所の特性と托卵の関係、ホトトギス剥製への攻撃強度と托卵の関係について調査を行う。また、多くの巣について繁殖経過を観察して巣立ち雛数・捕食頻度・托卵頻度の季節変化を明らかにし、ウグイスにとっての托卵のコストを推定する。
|
Research Products
(6 results)