Research Abstract |
ラットのプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子の転写制御機構について調べた。POMC遺伝子発現は,転写因子のTpitとPitx1により制御される。コルチコトロピン放出ホルモンは,ACTH産生細胞に作用し,PKA活性を増加させ,L-型電位依存性カルシウムチャネルを介して,カルシウムイオンの流入を高め,POMC遺伝子の転写を促進する。また,転写因子Nur77はPOMCプロモーターのNur応答配列(NurRE)に結合し,POMCプロモーター活性を上昇させる。その一方,POMC遺伝子の転写は,グルココルチコイド(Gc)によって抑制される。この抑制は,POMCプロモーターのNurRE配列を介すると考えられているが,TpitとPitx1の応答配列であるTpit/PitxRE配列への関与も考えられる。本研究では,Gcの抑制作用におけるTpit/PitxRE配列の関与を解析した。ラットPOMC遺伝子のプロモーター(-480/+63)をluciferase遺伝子に結合しプロモーター解析を行った。Tpit/PixREやNurREに欠損または,突然変異を導入したPOMCプロモーターでは,転写活性が低下した。カルシウムチャネル抑制剤,Nifedipine,カルモジュリン依存性キナーゼ抑制剤KN-62やカルモジュリン抑制剤W-7によって,cAMP依存性のPOMCプロモーター活性が低下した。さらにTpit/PixRE欠損または突然変異を導入したPOMCプロモーターでは,GcによるPOMCプロモーター活性の抑制が低下した。以上の結果から,POMCプロモーター上のTpit/PixREやNurRE配列はカルシウムイオン依存性にPOMC遺伝子の転写制御に関与していること,NurREのほかにTpit/PixRE配列がGcによるPOMC遺伝子の転写の抑制に関与していることが明らかになった。
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