2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17570058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 良一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 淮教授 (90165837)
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Keywords | 幹細胞 / 成長因子 / 筋芽細胞 / テラトカルシノーマ / 分化運命 / インクジェットプリンタ |
Research Abstract |
生体内では細胞は複数の成長因子による影響を受け、その増殖や分化の制御を受けていると考えられる。しかし、複数の成長因子の複合効果を実験的に再現することは容易でない。従って、複数の成長因子による細胞への生物学的効果はほとんど研究されていないといえる。我々はカラーインクジェットプリンタを用い、インクの代わりに成長因子を入れて培養基質に定量的にプリントし、その上で細胞を培養することで、複数種類の成長因子の及ぼす影響を調べる系(成長因子アレイ)を構築した。この系を用いて、分化多能性を有する幹細胞のモデル細胞であるマウス筋芽細胞株C2C12とテラトカルシノーマ細胞株PCC4を培養し、それらの分化に与える影響を検討した。C2C12に対してFGF, BGF, PDGFは増殖を促進し、分化に対しては抑制的で、筋衛星細胞への分化へも抑制的であった。また、TGF-βは増殖、分化、筋衛星細胞への分化ともに抑制的であった。しかし、TGF-βはFGFが共存すると筋衛星細胞のマーカーであるライセニン陽性細胞が増加した。この結果から、これまで不明であった筋衛星細胞(筋における幹細胞)への分化運命の制御にはTGF-βはFGFなどの複数の成長因子の複合作用が必要であることがわかった。また、テラトカルシノーマ細胞株PCC4に対する複数の成長因子の影響を検討したところ、TGF-βとBGFの存在下に神経細胞早期分化マーカーであるネスチンの発現が増強されることを認めた。今回の研究で成長因子が単一種類の場合には見られなかった幹細胞分化の制御が複数種類の成長因子共存下で起きることが証明できた。これは幹細胞を用いた再生医療を実施する上で必須である幹細胞の分化運命の制御を人工的に行える可能性を示唆した点で重要であると考えられる。
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