2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17570063
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 二郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (10284481)
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Keywords | 昆虫(夜行性) / 触覚 / 触角(アンテナ) / ハプティクス / 空間感覚 |
Research Abstract |
本研究は、複雑とされる能動的触覚(ハプティクス)を昆虫の触角(アンテナ)という比較的単純なシステムを用い、行動観察を基礎として生理学的にその神経機構を明らかにすることを目的として今年度より開始され、これまでに以下の知見を得た。 【空間認知の検証】動物は一般に狭い空間を好む性質(接触走性)がある。異なる4種類の曲率の壁からなる閉空間(アリーナ)に盲目コオロギを入れ、その滞在時間の空間分布を調べた。また形状は同じだか絶対サイズが異なる3種類のアリーナも用意し同様に調べた。その結果、コオロギは相対的に最も狭い空間を選択的に好むことが明らかになった。さらにアンテナを除去した場合、この検出能自体は消失しなかったが、感度が低下する傾向が見られた。 【アンテナ運動筋の神経支配】合計5種類のアンテナ運動筋より細胞内誘導をしながら、運動神経刺激によって発生する接合部電位を記録した。全ての筋繊維で興奮性接合部電位が記録された。抑制性接合部電位は記録できなかったが、抑制神経が運動神経中に存在することが電気生理的に示唆された。 【アンテナのキネマティクス】アンテナ筋肉の直接的電気刺激によっておこるアンテナ運動を2台のビデオカメラを用いて3次元解析し、各関節の回転軸の方向、振幅、中立位置などを調べた。アンテナは総関節自由度5の比較的複雑な運動をすることが分かった。 【薬理的に発現させたアンテナリズム】ムスカリン性アゴニストのピロカルピンをインタクトな動物の頭部に注入するとアンテナ運動が発現するが、これを2台のCCDカメラで3次元的に解析したところ、空間的に規則的な軌跡(8の字型)を描いた。また摘出脳でもピロカルピン投与により、アンテナの水平および垂直運動にかかわる運動神経間で協調的活動が引き起こされた。これらの結果はムスカリン受容体がアンテナの中枢パタン発生器の活性化と密接に関連していることを示している。
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