2006 Fiscal Year Annual Research Report
環日本海地域に分布するトミヨ属魚類遺存固有種群の分子マーカーから見た種分化の過程
Project/Area Number |
17570075
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高田 啓介 信州大学, 理学部, 助教授 (90197096)
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Keywords | トミヨ属 / 遺存固有種 / アロザイム / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
環日本海地域に遺存固有種として分布するトミヨ属種群について、種分化の過程を考慮に入れた分類の再整理を研究目的とし、アロザイムとミトコンドリアDNAを遺伝的マーカーとして解析を継続している。 昨年度に引き続くアロザイム解析においては、眼、肝臓、筋肉の各組織を用いて、7酵素での15遺伝子座の解析に成功した。これらのデータに基づいて遺伝的関係を構築した結果、環日本海地域に分布するこれらの遺存固有種群は2つの大きなグループから構成されていることが明らかになった。一つは山形・秋田の雄物型各2個体群と韓国南部に分布するP.kaibaraeの1個体群から成り、もう一方のグループは、ロシア沿海州のP.bussei2個体群と韓国北部のP.kaibarae個体群から構成されていた。 ミトコンドリアDNAの解析では、現在イトヨのミトコンドリアDNA塩基配列を基にしたそれぞれのプライマーセット3つを用いて、12SrRNAおよび16SrRNAで塩基配列を解析している。解析対象の塩基数や、解析個体群とその個体数はまだ少なく、アロザイムの様に遺伝的関係を推定するためのデータの蓄積を来年度も継続する予定である。 地元で天然記念物指定されていたために、H17年度に計画していた東北地方、特に山形県での標本の採集は次年度に延期せざるを得なかった。今年度は、山形県の担当部局に十分に研究内容の説明をし、理解を求める努力をした結果、DNA解析をおこなうのに十分な標本を採集することができた。 来年度は、母系遺伝をするミトコンドリアDNAからの遺伝情報と、アロザイム解析による核ゲノムからの遺伝情報を組み合わせることにより、環日本海地域に分布するこれら遺存固有種の系統的関係を総合的に考察できよう。
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