2007 Fiscal Year Annual Research Report
ノトテニア亜目魚類の種分化における紫外線感覚の消失とその意義に関する研究
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17570077
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
宮崎 多惠子 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (60346004)
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Keywords | ノトテニア / 南極 / 網膜 / オプシン / 色覚 / 紫外線感覚 |
Research Abstract |
ノトテニア亜目魚類の紫外線オプシン遺伝子に関する研究において、Pointer, et. al.(2005)が同遺伝子が単離されなかったと報告しているCampsocephalus gunnariの網膜から全長配列を決定した。同遺伝子からcRNAプローブを作製し、本種網膜における局在を調べるために、ナンキョクオキアミ資源量調査船に依頼して船上固定された稚魚網膜サンプルを今年度2月に入手した。他魚種を代用して予備実験を行い、固定後約1ケ月の冷蔵保存サンプルでのin situ hybridizationが可能であることを確認したが、今回のサンプルでは成功には至らなかった。一方、同固定標本を用いてC.gunnariの網膜における紫外線受容細胞の分布を解析するとともに、神経節細胞の分布を調べた。その結果、視神経乳頭付近にはTriple coneがあり、その外側にあたる部位に紫外線受容細胞が分布することが確認された。一方、神経節細胞は、通常サイズのものは尾側から腹側にかけて密度が高く、視軸は前方であると推定された。解析の過程で発見された通常サイズの3倍大きく、かつ規則的に並ぶ大型神経節細胞は尾側で最も密度が高く、吻側から背側にかけても高密度であったことから、オキアミ等の餌生物へのアタック行動に関与しているものと推察された。 その他のノトテニア亜目魚類6種についても紫外線オプシン遺伝子全長が決定された。ノトテニア亜目魚類の同遺伝子全長は1008bpで336残基のアミノ酸に翻訳された。種間相同性は85.7〜97.3%の比較的高い値を示した。近隣接合法による系統樹解析を行ったところ、Notothenia angustataを除いては、同亜目内の同じ科でクラスターを形成した。N.angustataのブートストラップ値は52であり、その分岐は事実上支持されないと判断された。一方、Pointer, et. al.(2005)がノトテニア亜目魚類には無いだろうと述べている赤オプシン遺伝子は、4種で全長配列が決定された。その他、青、緑オプシンを計18遺伝子の全長配列を決定し、DDBJに登録した。
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