2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17570079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永益 英敏 京都大学, 総合博物館, 助教授 (90218024)
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Keywords | 熱帯 / アジア / 照葉樹 / 分類 / ボルネオ |
Research Abstract |
本研究は日本の照葉樹林の基幹をなすローラシア系の植物群を対象として湿潤熱帯アジアにおける種分化の実態を調べることで,東アジアと東南アジアにおける同じ植物群の進化の様相を比較研究することを目的としている。湿潤熱帯アジアにおける照葉樹の代表としてボルネオなど西マレシア地域のハイノキ科を重点的に取り上げ,研究を行った。今年度はスマトラおよびボルネオの全種についてオランダ国立植物標本館のタイプ標本を検討し,昨年度行ったシンガポール植物園(シンガポール)およびボゴール植物標本館(インドネシア)の調査結果と合わせて分類学的再構成を試みた。ボルネオの高山を中心に多様に分化したと考えられるSymplcos laeteviridis群についてtrnL-FおよびITS領域のDNA配列を調べることによって種分化の様相を明らかにしようと試みたが,変異はあるものの十分な解像度のある分子系統樹を得ることは残念ながらできなかった。特定の種群としてはS.cochinchinensis群,S.ophirensis群についてマレー半島を含む西マレシア地域における分化と地理的分布を調査した。氷期にはスンダ陸棚として連続していたと考えられる西マレシア地域では低地に分布する種では広い分布域を持つものが多かった。しかし,山地に生育する種では山地ごとに多くの固有種が分化しており,特に3000m以上の山岳を有する北スマトラのアチェ山地,北ボルネオのキナバル山域で著しかった。日本では海による隔離が影響しているが,湿潤熱帯アジアでは山地が隔離されていることが同様に種分化や遺存に関わっている可能性が示唆された。日本で広い分布域をもつ種群は湿潤熱帯アジア域では見られないか遺存的に山地域に隔離分布しており,逆に湿潤熱帯アジア域にしかみられない種群も多く認識された。
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