Research Abstract |
ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)の原始的補体系を解明する一環として,MASPファミリー分子の同定を試みた。ヒトMASP-1遺伝子の解析により,H鎖は10個の,L鎖は6個のエクソンでコードされていること,H鎖とL鎖のイントロンの間に,MASP-3のL鎖をコードする別の単一エクソンが含まれていることが分かっている。すなわち,MASP-1/3遺伝子はL鎖をコードする領域が2つ縦列する構造をもち,H鎖とL鎖の間で起こる異なるスプライシングにより2つのMASP分子を産生することが分かっている。同様の遺伝子構造がヌタウナギMASPにも存在すると仮定すると,ヌタウナギでもMASP-3遺伝子を同定できる可能性がある。そこで,既に解析に成功しているヌタウナギMASP-1のH鎖のC末端と同L鎖のN末端部分をコードする塩基配列に基づいてPCR用プライマーを設計し,ヌタウナギ肝ゲノムDNAを鋳型にして,両末端部分に挟まれた領域の増幅を試みた。その結果,ゲノムDNAを鋳型にして増幅されたPCR産物は約4kbpで,その塩基配列を決定したところ,予想されるアミノ酸配列の中で終止コドンを含まない最長の塩基配列領域は1,185bpで,そのアミノ酸配列は,BRASTP解析によりヒトMASP-3のL鎖との高い相同性を示した。次に,ヌタウナギ肝から抽出・精製した全RNAを鋳型にしてRT-PCRを行い,同様の解析を行った結果,得られたPCR産物は約2.5kbpで,塩基配列から予想されたアミノ酸配列は,ヒトMASP-3に類似していた。これらの結果は,ヌタウナギでもMASP-1/3遺伝子が存在し,その構造がヒトの同遺伝子に酷似していることを示している。また,MASP-3遺伝子に由来するmRNAの存在が明らかになったことから,MASP-3タンパク質が,原始的補体系を構成する成分の一つとしてヌタウナギ血清中で機能している可能性を強く示唆している。
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