2005 Fiscal Year Annual Research Report
血管形成を制御するシグナル伝達ネットワークとその分子的基盤の解析
Project/Area Number |
17570106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮澤 恵二 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (40209896)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 壁細胞 / 細胞増殖因子 / 細胞分化 |
Research Abstract |
ES細胞由来VEGFR2^+細胞を血清存在下で培養すると壁細胞へと分化するが、さらにVEGF-Aで刺激すると約50%の細胞は血管内皮細胞へと分化するようになることが報告されている。この実験系を用いてVEGF-Aによる血管内皮細胞分化シグナルの伝達機構を検討した。 まず、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤FTI-277存在下では、VEGF-A刺激による内皮細胞の出現が抑制されることを見いだした。そこでのコロニー形成アッセイにより細胞の分化運命への影響を検討した。FTI-277はVEGF-A刺激下で出現するコロニー数全体にはほとんど影響しなかったが、内訳として、壁細胞コロニーの数を増やし、内皮細胞コロニーの数を減らした。したがって、FTI-277はES細胞由来VEGFR2^+細胞の内皮細胞への分化を抑制していることが考えられた。そこでFTI-277の標的としてG蛋白質、特にRasに注目して実験を進めた。VEGF-A刺激によるRasの活性化は、刺激後の早い時期(数分から一時間後)にはおこらないものの、数時間後以降に顕著に起こっていることを見出した。 また、H-Ras[G12V]をES細胞由来VEGFR2^+細胞に誘導発現したところ、VEGFR2^+細胞が血管内皮細胞へと分化することを見いだした。RasシグナルはしばしばVEGF-Aを誘導することが知られているが、VEGF可溶性受容体、あるいはVEGFR2キナーゼインヒビターSU5614により内皮細胞分化が阻害されないことを確認した。したがって、Rasによる内皮細胞分化はVEGF-Aの誘導を介した間接的なものではなく、Rasからの細胞内シグナル伝達により、直接、内皮細胞分化が誘導されるものと考えられた。
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