2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17570137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
垣谷 俊昭 名城大学, 理工学部, 教授 (90027350)
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Keywords | 電子移動 / 蛋白質 / 熱ゆらぎ / エネルギーギャップ則 / 逆転領域 / inelastic electron tunneling / 光合成反応中心 / 電子トンネル |
Research Abstract |
今年度は研究計画の第3番目の課題である「蛋白質のconformationが熱揺らぎをしているとき、蛋白質中電子移動はどのように影響を受けるか」について理論的定式化と計算機シミュレーションによる解析を行った。理論的には、電子の運動と原子核の運動が密接にカップルしている場合に有効なnon-Condon近似を採用して、電子移動速度の式を導出した。この理論の新規な点は、電子移動速度が、電子トンネルの途中の過程、すなわち超共役の過程で、エネルギーの出し入れを行わないelastic electron tunnelingとエネルギーの出し入れを行うinelastic electron tunnelingのそれぞれの過程からの電子移動速度の和として初めて表わされたことである。光合成バクテリアRhodobactor sphaeroidesの反応中心のbacteriopheophytinからprimary quinoneへの電子移動反応に適用するために、反応中心全体の分子動力学シミュレーションを実行し、得られたそれぞれの時間の蛋白質のconformationにたいして電子トンネル行列要素を量子化学計算で求めた。その結果、蛋白質構造の熱揺らぎに応じて、電子トンネル行列要素の値が大きく変動した。このデータを用いて、われわれが新しく構築した上のnon-Condon理論に従って電子移動速度を計算し、エネルギーギャップ則を求めると、エネルギーギャップの非常に大きい領域でinelastic electron tunnelingの効果が顕著に現れることがわかった。すなわち、通常のマーカス理論で見られる逆転領域が著しく持ち上げられることがわかった。このことは蛋白質中電子移動速度の調節にinelastic electron tunnelingの機構が有効に使われる可能性があることを示す。今後inelestic electron tunnelingの物理的意味を明らかにしていくとともに、その機構の働いている実際の電子移動系を探索していくことが重要である。
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