2006 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳開始とアクチン骨格の統括的制御機構に関する研究
Project/Area Number |
17570140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上園 幸史 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (30251408)
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Keywords | 浸透圧 / グルコース / アクチン / 翻訳 / 局所麻酔剤 / 抗精神病薬 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
グルコース飢餓や高浸透圧などの環境ストレスは出芽酵母で一過的な翻訳開始の停止やアクチン骨格の脱極性化を引き起こす。これらの反応は統括的に制御されており、未知の経路を介した急速な阻害反応と、Msn2/4転写因子、Snf1やHog1キナーゼなどの既存経路を介した適応反応の二つから構成されている。 テトラカインなど多数の局所麻酔剤が、高浸透圧やグルコース飢餓などの環境ストレスと同様に、出芽酵母でアクチン骨格の極性化や翻訳開始を急速に阻害する現象を見いだした。その薬剤効果は免疫抑制剤ラパマイシンに類似しているが、ラパマイシンの標的TORとは別経路で作用していることがわかった。またフルフェナジンなど多数の抗精神病薬も類似作用を持ち、麻酔剤より強力な阻害活性を示す事実も見いだした。阻害活性を持つこれら薬剤の構造を比較検討したところ、全て両親媒性構造を持ち、実際に界面活性能を持つ事実を化学的に証明した。そこで代表的な両親媒性化合物である界面活性剤も多数調べたところ、陽イオン性界面活性剤が臨床薬剤と類似で、且つ最も強力な阻害活性を示すことがわかった。これらの薬剤の化学構造はそれぞれ大きく異なることから、出芽酵母での臨床薬剤の標的は特定の蛋白質というより細胞膜そのものであると考えられる。また界面活性剤は細胞溶解を引き起こさない低濃度でも阻害反応を起こす事から、臨床薬剤や環境ストレスによる統括的な阻害反応は細胞膜破壊が原因ではなく細胞膜の撹乱が引き金になると考えられる。
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