2006 Fiscal Year Annual Research Report
胚性幹(ES)細胞からリンパ管内皮細胞への分化調節機構の解明
Project/Area Number |
17570153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 徹郎 東京大学, 大学院医学系研究科, 助手 (00334235)
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Keywords | 血管 / リンパ管 / ES細胞 / 再生医療 / 癌 |
Research Abstract |
血液は心臓から動脈へ送り込まれ毛細血管・静脈を経て心臓へ戻る。この血管系とは別個に組織液の排水路を形成するものがリンパ管である。この能力のために、炎症巣から病原体を運んで炎症の波及をきたしたり、癌組織から癌細胞を運んで癌の転移を引き起こしたりもする。上記のようにリンパ管内皮形成機構の解明は医学的に必要性が高いが、リンパ管形成の研究の歴史は比較的新しく、まだ不明な点が多く残されている。そこで本研究において申請者はES細胞からの血管分化系を用いて、血管内皮細胞がリンパ管内皮細胞などへと分化するダイナミクスを司る機構を、分子生物学的・生化学的なレベルでの解明を試みる。本年度は昨年度に引き続き主にProx1に焦点を当てて解析を進めた。近年の発生生物学の知見によりリンパ管が静脈から分化する過程においてまずLYVE-1というリンパ管マーカーが発現し、続いてLYVE-1発現領域の一部に発現するProx1というホメオボックス転写因子がさまざまな遺伝子発現の調節をすることによりリンパ管内皮前駆細胞が分化することが示されている。血管内皮細胞からリンパ管内皮細胞への分化におけるProx1の役割を検討するために、マウス胚性幹(ES)細胞由来の血管内皮細胞にtetracycline依存的にProx1を発現させて、その効果を分子生物学的、細胞生物学的手法を用いて解析した。Prox1の発現によりリンパ管内皮細胞マーカーであるVEGFR-3とPodoplaninの発現が亢進し、血管内皮細胞マーカーであるVEGFR-2とVE-cadherinの発現が減少した。またProx1により血管内皮細胞の運動性とVEGF-Cに対する走化性が亢進した。リンパ管の発生においてProx1陽性細胞が静脈から発芽し、VEGF-Cへと遊走する現象が観察される。以上の結果からProx1は遺伝子発現調節を介して細胞の運動性とVEGF-Cへの遊走能を亢進させるこどによりリンパ管発生を進めることが示唆された。
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[Journal Article] Prox1 Induces Lymphatic Endothelial Differentiation via Integrin α9 and Other Signaling Cascades.2007
Author(s)
Mishima K, Watabe T, Saito A, Yoshimatsu Y, Imaizumi N, Masui S, Hirashima M, Morisada T, Oike Y, Araie M, Niwa H, Kubo H, Suda T, Miyazono K.
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Journal Title
Molecular Biology of the Cell. 18
Pages: 1421-1429
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