2006 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ翅形成シグナルとエピジェネティクス
Project/Area Number |
17570184
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
中村 真 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (30212103)
|
Keywords | シヨウジョウバエ / エピジェネティクス / 形態形成 / クロマチン / 核 |
Research Abstract |
我々は、これまでの研究において、ショウジョウバエ翅形成に必要な遺伝子のひとつとしてtonalli(tna)と呼ばれる核タンパク質を研究してきた。tnaは先行研究からTrithorax(Trx)グループ因子として記載されている。Trxグループはエピジェネエティックな遺伝子発現調節における中心的な役割の一つを担っていることが知られている。昨年我々は、Tnaタンパクに対する特異的抗体を2種類作製することに成功した。この抗体は約110kdのTna蛋白質をWestem blot並びに組織免疫染色において認識し、tna変異体での発現量は著しく減少している。培養細胞並びに、生体に過剰発現した場合、110kdシグナルが強くなることから、この抗体は特異的にTnaを認識していることが明らかである。内在のTna蛋白質は主に核に局在しているが、細胞質にも一部存在する。また、細胞の種類によっては、細胞質局在の方が顕著な場合もあることから、Tnaは細胞質でもなんらかの機能を果たしていることが示唆される。今回、抗Tna抗体を使って、内在のTna蛋白質を免疫沈降することに初めて成功した。この実験は、クロマチン免疫沈降(ChIP)や、Tna蛋白質を含む蛋白質複合体解析をする上で、非常に重要なステップである。Tna変異体では、Trxによる調節を受けるHox遺伝子群の発現が顕著に低下していることが、これまでの我々の研究から明らかになっっている。今後はChIP法などにより、Hox遺伝子の転写調節にTnaが直接関与していること、TnaがTrxの機能に必須なコンポーネントであることを示したいと考えている。 また、Tnaとは別に、ショウジョウバエの初期発生並びに変態期に必要な遺伝子dNAT1に関する研究も同時に進行している。dNAT1はeIF4Gと部分的に相同性のある翻訳調節因子であり、我々は、dNAT1が変態ホルモンによって誘導される転写因子の一つを、翻訳レベルで調節していることを明らかにした。
|