2006 Fiscal Year Annual Research Report
核とオルガネラに重複する遺伝子のクロストークを基にした細胞内共生に関する研究
Project/Area Number |
17570187
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
太田 にじ 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 講師 (60257186)
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Keywords | ミトコンドリア / 葉緑体 / 系統解析 / 進化 / 核とオルガネラのクロストーク |
Research Abstract |
本研究では原始紅藻Cyanidioschyzzon merolae 10D株の細胞核と色素体ゲノムの両方に存在する同じ遺伝子の系統関係の解析と機能の相違に関する研究を行った。C.merolaeの核と色素体ゲノムのデータベース検索の結果、重複する遺伝子を2種類見出した。ルビスコの発現に関与すると考えられるcfxQ及び色素体のストロマからチラコイド内腔へタンパク質を輸送すると考えられるsecAである。推定されるアミノ酸配列を用いてML法で系統解析を行った結果、色素体ゲノムにコードされている遺伝子と核にコードされている遺伝子との系統関係は離れており、起源が異なる可能性を示唆した。 次に機能解析をするための基礎として6×His-TagをN末端につけた遺伝子をプラスミドベクターに組みかえてクローン化し、大腸菌内でタンパク質を大量発現させた。CfxQはいずれにコードされている遺伝子の場合もタンパク質を多量に発現させることが出来たが、SecAの場合は異なっていた。色素体ゲノムにコードされているsecAを発現させた場合は大腸菌の生育が阻害されたが、核のsecAの場合は阻害されなかった。このことは2つのsecAの機能が異なること、色素体ゲノムにコードされているSecAは大腸菌のそれと似ており、競合阻害する可能性があることを示唆している。このことは(1)色素体ゲノムコードのsecAは原核生物(おそらくシアノバクテリアと最も類似性が高い)由来であって同じく原核生物である大腸菌のsecAと類似していること(2)核コードのsecAはそれ以外の起源であり色素体ゲノムにコードされている遺伝子の補助的役割をすることを示唆している。 現在色素体ゲノムコードのsecAを大腸菌内で大量発現させる系の条件検討、及びcfxQの機能に関して調べている。タンパク質の大量発現系が確立すればプルダウンアッセイ等を用いて輸送タンパク質の違いを探すこととしている。一方cfxQに関しては、転写開始点及びタンパク間の相互作用について検討することを次の目標とする。
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