2006 Fiscal Year Annual Research Report
メダカのグロビンおよび孵化酵素遺伝子からみた硬骨魚の遺伝子進化
Project/Area Number |
17570189
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
井内 一郎 上智大学, 理工学部, 教授 (10011694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安増 茂樹 上智大学, 理工学部, 助教授 (00222357)
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 進化 / 蛋白質 / グロビン / 孵化酵素 / メダカ / 硬骨魚 |
Research Abstract |
I:硬骨魚グロビン遺伝子の進化。 メダカグロビンの遺伝子は極めて多様で、分子系統学的解析により成体型グロビン遺伝子クラスターA1と胚型グロビン遺伝子クラスターE1の、2つのクラスターとして存在していた。A1、E1はそれぞれLG19とLG8の染色体上にあった(Maruyama et al,2004)。ゼブラフィッシュのゲノムデータベースを検索すると、グロビン遺伝子は極めて複雑なクラスター構造をとっているが、それらは、メダカのA1及びE1クラスターと相同なクラスターとしてまとめられる。また、同様にフグを調べてみると、この場合もメダカのA1、E1に相当するクラスター構造をとっているが、メダカやゼブラフィッシュに比較して極めて単純で、しかも、β遺伝子は一個だけが確認できた。祖先クラスターから、フグでは遺伝子が消失する方向に、ゼブラフィッシュでは多様化複雑化する方向に進化したことが分かる。これらの過程で、遺伝子重複、転座、偽遺伝子化等、複雑な変化の起こったことが明らかとなった(Maruyama et al,2004)。 II:硬骨魚孵化酵素遺伝子の進化。 硬骨魚27種の艀化酵素遺伝子全てをクローニングした。それらのタンパク質部分の情報を用いて系統樹を作製すると、アロワナ上目やカライワシ上目はただ1つのタイプの孵化酵素を持っていた。一方、カライワシ上目から側系統的に分岐したニシン・骨鰾類および正真骨類の孵化酵素は、それぞれ、別々に、2つのタイプのあることを明らかにした。それぞれをグループAとグループB(ニシン・骨鰾類)、および、HCEとLCE(正真骨類)と呼んでいる。この事実を根拠に、本研究では、カライワシ上目が分岐した後で孵化酵素遺伝子の多様化が起こり、さらに、正真骨類でHCEとLCEの遺伝子が生じたことを予想した。また、ニシン・骨鰾類内でさらに分岐したコイ・カラシン類からはグループAの遺伝子のみしかクローン化されず、コイ・カラシン類ではグループBの遺伝子を失ったものと予測した。孵化酵素遺伝子からみた進化の道筋は、ミトコンドリアDNAから作られた系統樹をよく反映していた。現在、これらの遺伝子のエクソン/イントロンの構造を詳しく調べている。
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