2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞性粘菌を利用したSTAT関連シグナルと多細胞性獲得の進化学的解析
Project/Area Number |
17570190
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
川田 健文 東邦大学, 理学部, 助教授 (30221899)
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Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 / 進化 / 発生・分化 |
Research Abstract |
本研究は、生物の進化における謎の1つである多細胞生物出現の過程を、最も原始的な多細胞生物である細胞性粘菌を用いて行うものである。細胞性粘菌は、子実体を形成する過程で、柄細胞のプログラム細胞死伴い、この過程に転写因子STATが必須である。また、STATシグナルは多細胞生物に特異的である。ことから、STAT関連シグナルを探索すれば多細胞化に関する何らかのヒントが得られると考えた。 本年度の実施概要は以下のとおりである。 1)既に動いているSTAT関連遺伝子としてのSTATaサプレッサー遺伝子のスクリーニングの継続を行った結果、新たに数個のサプレッサー遺伝子が単離された。そのうちの幾つかは、ncRNAとして機能しているのではという予備データが得られ、RNAワールドとSTATの関連性が示唆された。 2)既に同定されたDd-STATaサプレッサー遺伝子Dd-CH1は、コードするタンパク質は全ての真核生物に保存された領域を持ち、膜タンパク質と考えられる。そこで、1.GFPタグを導入し、実際の細胞内局在を観察したところ膜タンパク質であることが確認できた。2.Dd-CH1遺伝子の全コード領域をもつcDNAを親株と野生株で過剰発現させたところ、形態変化はなく、タンパク質のN末端領域がdominant negativeとして効いていることが判明した。3.Dd-CH1遺伝子の破壊株の作製は困難を極め未だ成功していない。部分遺伝子破壊株が得られているが、形態変化はなかった。また、RT-PCRの実験よりDd-CH1はDd-STATa遺伝子の下流には位置しないことが明らかとなった。 3)Dd-STATaによって発現が制御されるプログラム細胞死関連遺伝子の検索について行った。細胞性粘菌に存在する全てのプログラム細胞死関連遺伝子をゲノムデータベースからピックアップした。そのうちESTクローンが存在し解析可能なもの14遺伝子について、STATaの標的遺伝子になっているかをin situハイブリダイゼーション法で調べた。その結果、少なくとも5つの遺伝子でDd-STATa遺伝子破壊株において発現が消失(あるいは低下)し、そのうち3つの遺伝子はSTATaの標的遺伝子になっている可能性が極めて高いことが判明した。これらの中にはDOCK familyやELMO/CED-12 familyのホモログ遺伝子が含まれていた。
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Research Products
(1 results)