Research Abstract |
ウンカ耐虫性の遺伝分析については,インド型品種ADR52と台中65号のBC4F2集団を用いた連鎖分析により,BPH抵抗性に関する劣性遺伝子bph20(t)と優性遺伝子Bph21(t)をそれぞれ染色体6の短腕と染色体12の長腕に位置づけた。また,ウンカ耐虫性遺伝子に関する近似同質遺伝子系統(NIL)の育成については,上記交配組み合わせに由来するBC5F1を育成した。 NIL(BC4F2)を用いたウンカバイオタイプ変遷機構の解明については,累代飼育しているトビイロウンカ個体群4系統(1966,1989,1999,2005年採集個体群)の,異なるトビイロウンカ抵抗性遺伝子を持つウンカ抵抗性判別品種とトビイロウンカ抵抗性遺伝子bph20(t)とBph21(t)をそれぞれ保有するNILに対する加害性を調査した。その結果,1966年個体群はいずれの抵抗性遺伝子に対しても加害性を持たず,1989年個体群はBph1のみに加害性を示し,1999年個体群はBph1とbph2に対して加害性を示した。一方,bph20(t)とBph21(t)を持つNILに対するトビイロウンカ各系統の加害性については,bph20(t)とBph21(t)をそれぞれ単独に持つNILに対して,1966年と1989年の両ウンカ個体群の加害性は弱く,1999年と2005年個体群が強い加害性を示した。しかし,両抵抗性遺伝子(bph20(t)とBph21(t))を併せ持ったNILに対しては,いずれのウンカ個体群の加害性も弱かった。 NILを用いた殺卵・殺虫成分の単離・同定については,セジロウンカ産卵時の日本型イネの生理的変化を,benzyl benzoate(BB)生合成系を中心として遺伝子発現解析と代謝物分析の両面から調べ,殺卵機構の解明を目指した。材料には,殺卵作用を示すあそみのり,NIL(qOVC+1-3,+5-1,+5-2)と殺卵作用を示さないIR24を用いた。セジロウンカ産卵を受けた場合に,上記系統のBB生合成酵素benzyl alcohol benzoyl transferase(BEBT)の発現量はいずれも増加しており,その発現は産卵3時間後が最も高かった。一方で,cinnamic acid-4-hydroxylase(C4H)蓄積し液浸化形成が進むにつれてその量は増加すること,また,これに同調し発現強度が増すことを確認した。
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