2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580015
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
井上 直人 Shinshu University, 農学部, 教授 (80232544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 素之 信州大学, 農学部, 教授 (90172840)
斉藤 保典 信州大学, 工学部, 教授 (40135166)
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Keywords | 酸化 / 光 / 植物 / ポリフェノール / 一重項酸素 / 過酸化水素 / 呼吸 / 光合成 |
Research Abstract |
作物が光合成をする際のエネルギーの移動によって生じる一重項酸素は光の照射にともなって起こる光酸化(正確には、光増感酸素酸化)でも生じるために光老化をもたらす重要な要因となっている。この研究では、化学的には未同定ではあっても光酸化抵抗性機能を有する遺伝子型を簡易に評価する方法を確立して、育種プログラムの特性検定試験に取り入れることを可能にすることをねらったものである。 低温・強光条件の高山地帯に起源し、たえず強い光ストレス環境下におかれて進化してきたソバのような作物は一重項酸素をクエンチングする化学物質を多量に合成して自らの老化を阻止していると推察されるので、それを材料にして評価することは機能性食品や化粧品の素材となる作物を育種する上で極めて重要と考えられる。この研究では、これらの作物の種、品種間差異について一重項酸素のクエンチング能を時間分解計測によって正確かつ詳細に比較検討するとともに、それを簡易に評価する光化学的手法の開発を目指した。光酸素化酸化(光酸化)に対する抵抗性の器官間差異を調査した。 19年度は、コムギ、オオムギなどの冬作物を材料に用いて、同一環境で栽培し、作物体を葉,茎,花器(果実を除去した開花中の小花と蕾),えい花に分離し,計測した。 光酸化をもたらすクロロフィル、障害回避にかかわるキサントフィルサイクル関連鍵物質について、HPLCと紫外励起蛍光分析を実施した。その結果、(1)それらの物質には器官間差異があり、クロロフィルが多ければ光酸化障害回避物質がそれに呼応していつも増えるのではないことがわかった。(2)また種間差異があり、コムギとオオムギでは形態的には類似しているものの、光障害を回避する色素の動態は異なると考えられた。オオムギのほうがクロロフィルaに対してキサントフィル(ゼアキサンチンとβ-カロテン合計値)が多く、コムギよりもオオムギのほうが光障害を回避する潜在力が強いと推察された。このことはオオムギが寒い乾燥地にも適応していること、乾燥ストレスで慣例な場合は酸化障害を回避するためにこうした色素が重要であることを説明するものであり、整理生態学的条件と矛盾しない。 20年度は、さらに次のステップに進め、紫外励起レーザーや分光器による活性酸素消去物質の非破壊計測だけでなく、クロロフィル、β-カロテン、キサントフィルの非破壊推定だけでなく、暗反応のカギ物質であるRubiscoを紫外励起蛍光分析で非破壊計測できるようにする。
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Research Products
(4 results)