Research Abstract |
セイヨウナシでは,結実の安定性と適正着果量への調整のために人工授粉,予備摘果,仕上げ摘果などの結実管理が行われている.平成18年度は新たにクローニングした5種類のS-RNase(Sm-,Sn-,Sp-,Ss-,St-RNasse)を加えた17種類S-RNaseを有する品種の遺伝子型を推定できるシステムの開発とセイヨウナシ10品種の自家落果性の評価に取り組んだ. 3'と5'RACE法により5種類の3-RNase cDNAの全長配列を決定し,これらS-RNaseがナシ亜科S-RNaseに特徴的な1次構造を有することを確認した.ゲノミックPCRにより各S-RNase断片は1906bp(Sg),1642bp(St),1414bp(Sl),ca.1.3kb(Sk and Sq),998bp(Se),440bp(Sb) and ca.350bp (Sa,Sc,Sd,Sh,Si,Sm,Sn,Sp,Sr and Ss)に増幅された.電気泳動により識別が困難であったca.1.3kbとca.350bpの断片を11種類の制限酵素で切断し,17種類のS-RNase対立遺伝子を識別するCAPSマーカーシステムを開発した.このシステムを用いて104品種の遺伝子型を推定することができた. ‘ル・レクチェ',‘オーロラ',‘スタークリムソン'の交配3週間後の花そう内幼果数は1個前後となっていた,無摘果区と1果そうの幼果数を1果に減らした予備摘果区の果実を収穫適期に収穫し,果実形質を比較した.上記3品種の果実形質には,無摘果区と予備摘果区で差異なかった.‘ル・レクチェ',‘オーロラ',‘スタークリムソン'は,受粉後落果性が強いこと,さらに摘果作業の有無は果実肥大にあまり影響しないことから,自家摘果性を有すると結論づけた.
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