Research Abstract |
青果物は収穫後に置かれた様々な流通・貯蔵環境により,その品質の変化が生じる。高温処理は,収穫後青果物を40〜50℃の温度帯で短時間処理する方法であり,低温障害および鮮度低下の抑制方法として注目されている。本年度は,高温処理によるブロッコリー花蕾の脱緑抑制とキュウリ果実の低温障害抑制について,その抑制メカニズムと抑制方法の検討を行った。 1.ブロッコリー花蕾のクロロフィル分解酵素としてMg-脱離物質に着目し,その特性と貯蔵中の変化について調べた。ブロッコリー花蕾のMg-脱離物質として,低分子物質(MW5,000〜10,000)と高分子物質(>MW10,000)の存在が認められ,これら両物質は脱緑に伴い増大することがわかった。 2.高分子物質(Mg-デキレターゼ)についてゲルろ過クロマトグラフィーにより分析し,分子量80KDであること,また,アイソザイムは存在しないことがわかった。さらに,この物質は基質としてクロロフィリッドaに作用し,フェオホルビドaを形成することを認めた。 3.両Mg-脱離物質は高温処理(50℃,2時間温風処理)により貯蔵中の増大が抑制されることがわかった。このことから,高温処理はMg-脱離作用を制御することにより脱緑抑制を示しているものと推察した。 4.キュウリ果実を低温貯蔵(4℃)すると,果皮に水浸状部位の形成,果皮の陥没などの低温障害が生じた。低温障害の発生とともに,生体膜からのK^+イオン漏出の増加,過酸化水素の増加などの現象がみられ,低温障害の発生は生体膜透過性の変化と活性酸素生成が関与しているものと思われた。 5.過酸化水素の消去に作用するアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)とカタラーゼ(CAT)活性の変化を調べたところ,4℃貯蔵ではCAT活性のみが増大し,キュウリ果実の場合,CATが深く低温障害に関与しているものと推察した。 6.キュウリ果実に高温処理(40℃-1時間と2時間,45℃-0.5時間と1時間,温風処理)を行い,4℃で貯蔵したところ,無処理区に比べすべての処理区でK^+イオン漏出の増加が抑制され,その効果は特に45℃処理で顕著であった。過酸化水素含量の増大も,45℃0.5および1時間処理区で抑制された。今後は,キュウリ果実の高温処理による低温障害抑制機構について,さらに検討する予定である。
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