Research Abstract |
本年度は,カイコの胚子活性化に関与する新規RNAヘリケース(RNA helicase-like ; RHL)の胚子発生過程における卵内の分布と細胞内局在性の解明,RHLをコードするゲノムDNAの構造の解明,およびRHLをリン酸化するキナーゼの解明などを主に行った。その実績の概要を以下の(1)〜(3)に示す。 (1)RHLをコードする完全長cDNAのORF部分を大腸菌内で発現させたリコンビナント・タンパク質(rRHL)を用いて,rRHLに対するポリクローナル抗血清を作成する事に成功しているので,非休眠卵の産卵後12,24,36,60時間目の切片を用いて免疫組織化学的にRHLの分布と局在の観察を行った。その結果,RHLは,12時間目の卵では胚盤葉に,24時間目以降の卵では卵黄細胞にそれぞれ分布しており,それらの細胞中では全て核周辺部にRHLが特異的に局在している事が明らかとなった。 (2)ゲノムサザン解析では,RHL遺伝子がゲノム中にシングルコピーで存在し,第2連関群に座位する事なども既に明らかとなっている。今回は,シス領域を含むゲノムDNAの構造解明を目的としてカイコのゲノムライブラリーのスクリーニングを試みたところいくつかの陽性クローンが得られた。その塩基配列の解析を行ったところ,RHL遺伝子は,二つのエキソンよりなり,その翻訳領域は2番目のエキソン中にコードされている事が明らかとなった。また,転写開始点より上流約3.5kbの解析を行ったところ,-900b以内にTATA-box, GC-box, CCAAT-box, GT-boxなどの基本転写に関わるプロモーター領域が確認され,それより上流に転写因子結合エレメントが約20箇所確認された。 (3)rRHLは主に卵内のカゼイン・キナーゼ2(CK2)によりリン酸化を受ける事が明らかとなったので,カイコCK2をコードするcDNAクローニングにも着手した。その結果,活性サブユニットと調節サブユニットの両者のクローニングに成功した。更に,酵素活性の変動と遺伝子の転写の両者を解析したところ,酵素の活性調節は転写レベルではなく翻訳後の調節により行われている可能性が強く示唆された。
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