2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国大陸のトノサマバッタの生活史と休眠の生理生態学的研究
Project/Area Number |
17580048
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
田中 誠二 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット, 上級研究員 (50370664)
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Keywords | トノサマバッタ / 相変異 / 国際研究者交換 / 昆虫学 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、トノサマバッタの地理的・季節的適応様式を明らかにするために、中国大陸に分布する個体群の生活史の解析と休眠特性を調べ、地理的・季節的適応様式を解明するのが目的である。北緯17〜47度の範囲に分布する中国大陸のトノサマバッタ系統のうち最南端個体群である海南島系統について25と30℃に卵を置いて休眠性を調べた結果、最近中国人研究者により報告された結果どおり休眠する卵は見られなかった。しかし、20℃に置いた場合、多数の卵が休眠することが判明し、野外でも卵が休眠状態で越冬している可能性を示唆する証拠が得られた。アジアにおける本種の休眠の記録は、わずかな個体が休眠する日本の沖縄(北緯26度)個体群が最南端であることを考えると、海南島での休眠性はたいへん興味深い。温度の変動に応じて休眠したり回避したりする機構が存在し、冬の寒さの度合いに応じてその生存価が変動する休眠が熱帯でも進化しうることを示唆している。この点については、海南島の中国人研究者と越冬中の野外個体群の調査と野外での飼育実験を通して解明する予定であり、実験は本年度にすでに一部開始した。海南島系統と他の中国個体群系統との正逆交配実験はほぼ完了したが、低温処理して休眠個体を決定する処理が一部残っているので、すべての解析が終わるにはもう少し時間が必要である。休眠性は多数または複数の遺伝子により制御されていることを示す結果が得られている。休眠の深度を比較する実験を再度行った。今回は、産下された卵を20℃に様々な期間置いたのち25℃に移して艀化パターンを比較した。その結果、休眠の深度は、北の個体群ほど深いことが分かった。また、予備的に-10と-20℃での耐寒性も調べたところ、北緯47度の系統が最も強い耐寒性を示し、海南島の系統では最も弱いことが分かった。これらの結果から、中国大陸における本種の生活史の変異とその季節的制御様式を説明することが可能であると思われる。
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Research Products
(2 results)