2005 Fiscal Year Annual Research Report
酵母脂肪酸不飽和化酵素遺伝子群の発現制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
17580060
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶原 将 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教授 (10272668)
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Keywords | 脂肪酸 / 不飽和化酵素 / 遺伝子発現 / ストレス応答 / 酵母 / プロモーター解析 |
Research Abstract |
酵母S.kluyveriがどのようなストレス環境に置かれた時に脂肪酸不飽和化酵素遺伝子群(Sk-OLE1、Sk-FAD2、Sk-FAD3)の転写発現が応答するのか、そしてそれらの転写発現制御に関わるDNA領域(シス因子)はプロモーター領域上のどこに存在するのかを明らかにするために研究を行った。先ず、ストレス環境下における脂肪酸不飽和化酵素遺伝子群の転写発現解析を行った。(1)培地中への不飽和脂肪酸添加、(2)低温ストレス、(3)低酸素状態の3つの環境条件下でのS.kluyveriの3つの脂肪酸不飽和化酵素遺伝子群の転写発現解析を詳細に解析したところ、全ての遺伝子が(1)の条件では応答はみられず、(2)の条件ではSk-OLE1とSk-FAD2が2時間後に、Sk-FAD3は6時間後に発現量が最大となるよう誘導されることがわかった。(3)の条件では、Sk-OLE1とSk-FAD2は6時間後に発現量が最大となるよう誘導されるが、Sk-FAD3は時間の経過とともに発現量が一過的に減少することがわかった。さらにS.kluyveriのFAD2やFAD3の破壊株を作製して、(2)の条件下での転写発現を解析した結果、Sk-FAD2またはSk-FAD3の発現変動は野生株と変わらないが、Sk-OLE1は各破壊株で違いが認められ、上記の3つの遺伝子は各々が異なる発現制御を受けていること、そしてSk-FAD2とSk-FAD3は低温ストレスに対して一次的に応答するが、Sk-OLE1は低温ストレス後の細胞の状態、特に細胞膜の状態を感知して二次的にも応答することが分かった。次に、S.kluyveriの脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の発現制御領域の特定のために、β-ガラクトシダーゼ遺伝子をレポーターとしたSk-OLE1プロモーター発現解析ベクターを作製し、発現系を構築した。そこで、PCR法を利用して作製したSk-OLE1の部分欠損プロモーターとβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を結合した遺伝子の発現解析を行ったところ、翻訳開始点の上流-141まで削除したプロモーターでは、転写発現誘導がほとんど認められないことがわかった。-150から-141の領域にはS.cerevisiaeの低温応答配列と類似した配列があることから、S.kluyveriがでもこの領域がOLE1の転写発現誘導に関わっている可能性が示唆された。
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