2006 Fiscal Year Annual Research Report
可逆的脱炭酸酵素群の特性解析と新規炭酸固定法の確立
Project/Area Number |
17580062
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長澤 透 岐阜大学, 工学部, 教授 (60115904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 豊和 岐阜大学, 工学部, 助教授 (90220657)
満倉 浩一 岐阜大学, 工学部, 助手 (70324283)
松田 知子 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 講師 (10319494)
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Keywords | 芳香族ヒドロキシカルボン酸 / 炭酸固定 / 可逆的脱炭酸酵素 / 4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素 / 2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素 |
Research Abstract |
地球温暖化の温室効果ガスの一つとして二酸化炭素の可能性が危惧されている。一方、限られた資源を有効活用するという点から、二酸化炭素を回収し積極的に有用物質に変換する分子変換技術の確立が切望されている。本研究において、微生物の脱炭酸酵素の炭酸固定反応を有用物質生産のための分子変換技術として確立することを目的とし、芳香族カルボン酸脱炭酸酵素が取り上げられ、これらの酵素の炭酸固定活性が明確にされ、芳香族カルボン酸の生産への応用が検討された。 (1)4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の特性解析 4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を有する微生物が各種土壌サンプルを用いて探索され、高活性菌として通性嫌気性菌Enterobacter cloacae P240が選択され、4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素が精製単離された。本酵素は分子量60kDaのサブユニットからなる6量体であった。精製酵素は炭酸固定反応を触媒し、20mMのフエノールから3mMの4-ヒドロキシ安息香酸を生成することが明らかにされた。 遺伝子解析の結果、E.cloacae P240の4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は既に報告されている絶対嫌気性菌Clostriduim hydroxybenzoicumの酵素と一次構造において53%の相同性を示すことが明らかとなった。一方、90%以上の相同性を示す機能未知タンパク質が微生物に広く存在し、これらのタンパク質は4-ヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素に相当すると推定された。50%以上の相同性を示したタンパク質のアライメント解析が行われ、高度に保存されているモチーフ配列が見出された。 (2)2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の特性解析とその応用 新規酵素2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素がAgrobacterium tumefaciens IAM12048とPandoraea sp.12B-2に見出された。両菌株からそれぞれ2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素が精製単離された。精製酵素の分子量はそれぞれ123kDa、(サプユニット分子量40kDa)、98kDa(サブユニット分子量38kDa)であった。両酵素は上述の2つの脱炭酸酵素とは異なり、安定性の高い酵素であることが明らかにされた。A.tumefaciens IAM12048とPandoraea sp.12B-2の2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の一次構造は72%の相同性を示すことが明らかにされた。これまで報告されている芳香族カルボン酸脱炭酸酵素で認められた高度に保存されているモチーフ配列がこれらの酵素には存在せず、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は新しいタイプの脱炭酸素であることが明らかにされた。 薬品、化成品の原料として有用な2,6-ジヒドロキシ安息香酸のPandoraea sp.12B-2の炭酸固定活性を用いた生産条件が検討された。3M KHCO_3と3M 1,3-ジヒドロキシペンゼンを添加し、密閉容器内で炭酸固定反応が行われ、1.43M(220mg/ml)の2,6-ジヒドロキシ安息香酸の蓄積が可能であった(モル変換率は48%)。また、超臨界二酸化炭素条件下での炭酸固定反応が試みられ、本条件下でも炭酸固定反応が進行することが確認された。
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Research Products
(3 results)