2006 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陽性細菌のクォーラムセンシングを標的とした新奇抗菌剤の開発
Project/Area Number |
17580068
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
中山 二郎 九州大学, 大学院農学研究院, 助教授 (40217930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 宏次 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (30280788)
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Keywords | 腸球菌 / クォーラムセンシング / スクリーニング / 阻害剤 / ゼラチナーゼ / 病原因子 / 抗感染症剤 / ポスト抗生物質 |
Research Abstract |
腸球菌Enterococcus faecalisの病原因子の一つと言われるゼラチナーゼの生産は、GBAPと命名された環状ペプチドをオートインデューサーとしたクォーラムセンシング(QS)により制御されている。GBAPとその生合成酵素FsrB、GBAPのセンサーキナーゼFsrCはfsr遺伝子群にコードされており、このQS制御系はfsr制御系と呼ばれている。本研究は、(1)FsrBによるGBAPの生合成、(2)FsrCによるGBAPのシグナリング、この2つを阻害のターゲットポイントとする新しいタイプの抗感染症剤を開発することを目指している。(1)については:FsrBの変異導入実験により、膜貫通領域2番目と3番目の間の細胞内ドメインに位置する、Arg-67,Gly-71,His-73,Cys-80がGBAPの生合成に必須であることを見出し、FsrBはシステインプロテアーゼ様の活性によりGBAPプロペプチドFsrDのプロセシングおよび環化を行っていることを示唆した。FsrBに相同性を示すタンパク質は、ブドウ球菌、リステリア菌、クロストリジウム菌にも存在し、FsrBの阻害剤はこれらのグラム陽性菌の病原性を広く抑えることのできる薬剤として期待される。実際に、本年度はリステリア属細菌の環状ペプチドの構造解析にも成功している。(2)についてはGBAPのアンタゴニストがターゲットとなる。現在、協同研究者の永田博士らのグループとFsrCの結晶構造解析を行なっている。現在までに5.5オングストロームのX線回折斑点を得ている。また、GBAPのNMR溶液構造解析にも成功し、GBAPは溶液中で特定の立体構造をとらず、インデューストフィット型の受容体との相互作用を示すことを示唆している。また、GBAP類縁体による構造活性相関研究を進め、GBAPの環部分の二つの芳香族アミノ酸が活性に重要であることを明らかにした。また、天然物を対象にfsr制御系の阻害剤のスクリーニングを行ない、放線菌の二次代謝産物であるシアマイシンがfsr制御系をμM以下の濃度で阻害することを見出している。以上の知見はfsr制御系を標的とする抗菌剤の開発に重要な知見を与えるものである。
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Research Products
(3 results)