Research Abstract |
生体内では様々な糖鎖が細胞間及び分子間認識に重要な役割を果たしているが,その生理活性は,多くの場合,糖鎖を特異的に認識するレクチン(糖結合タンパク質)によって成り立っている。本研究では,多様な構造と機能を有するCa^<2+>依存性レクチンを中心として,その糖認識機構を詳細に解析するとともに,タンパク質工学的に糖結合特異性を改変することによって新たな糖鎖認識能を付与した組換え型レクチンを作製した。レクチンとしては,海産無脊椎動物グミ(Cucumaria echinata)体液中に含まれるCa^<2+>依存性レクチンCEL-I,CEL-III,CEL-IVを用い,それらの部位特異的変異体を大腸菌によって発現させ,得られた組換え型レクチンrCEL-I,rCEL-III,rCEL-IVの構造と機能について検討を行った。この中で,rCEL-Iについては,種々の部位特異的変異体,特に糖との結合に関与するアミノ酸残基を変異させたR115A,Q70A,Q70A/R115A,R115E,Q113Aを作製し,それらの結晶化及びX線構造解析を行った。その結果,野生型組換え体WTとともに,数種の結晶が得られ,特にQ113Aについては立体構造解析に十分な回折データが得られた。一方,rCEL-IIIについては,糖(ガラクトース,α-メチルガラクトシド,N-アセチルガラクトサミン)との複合体結晶が得られ,いずれも放射光によって良好な回折データが得られたことから,その結晶構造解析を行い,糖認識機構が明らかになった。また,rCEL-IVについては,メリビオースとの複合体結晶の構造解析に成功したことから,今後はより詳細な糖認識機構を明らかにするために,種々の部位特異的変異体作製を行う予定である。
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