2005 Fiscal Year Annual Research Report
分岐鎖アミノ酸の血糖値低下作用の機構解析とその糖尿病治療への寄与
Project/Area Number |
17580104
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (10269243)
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Keywords | イソロイシン / ロイシン / 糖代謝 / グリコーゲン合成 / タンパク質合成 / 骨格筋 / ラット |
Research Abstract |
本年度は分岐鎖アミノ酸が血糖値を低下させるメカニズムの解明を日指して以下のような研究を行った。 (1)分岐鎖アミノ酸のグルコース取り込み促進能の評価 ロイシンとイソロイシンは骨格筋へのグルコースの取込みを促進することで血糖値を低下させるものと考えられる。そこで、分岐鎖アミノ酸を投与したラットに2-[1,2-^3H]-deoxyglucoseを尾静脈から投与して、骨格筋内の2-[1,2-^3H]-deoxyglucose-6-phosphateを測定することで、分岐鎖アミノ酸のグルコース取り込み促進能を評価した。18時間の絶食にしたラットに135mg/100g bwのロイシンを経口投与した場合、1時間後に血糖値は減少する傾向がみられたものの対照群との間に統計的な有意差はなく、骨格筋へのグルコースの取込みはわずかに促進されたものの対照群との間に統計的な有意差はなかった。一方、同量のイソロイシンを投与することで血糖値は有意に減少し、骨格筋へのグルコースの取込みが有意に促進された。 (2)取り込まれたグルコースがエネルギーを産むか否かについての検証 骨格筋に取り込まれたグルコースは代謝されエネルギー源として利用されるのか、あるいはグリコーゲンに合成されて蓄積されるのかを明らかにする必要がある。そこで、分岐鎖アミノ酸を投与したラットに[U-^<14>C]-glucoseを尾静脈から投与して、骨格筋内のグリコーゲンに取り込まれた[U-^<14>C]-glucoseを測定した。その結果、ロイシンを経口投与することで骨格筋でのグリコーゲン合成が有意に増加したが、イソロイシンを経口投与してもグリコーゲン合成は刺激されなかった。このことはイソロイシンが骨格筋へのグルコースの取り込みを刺激し、取り込まれたグルコースはエネルギー源として利用されていることを暗示している。 (3)分岐鎖アミノ酸のグルコース取り込み促進機構の解析 最近の研究でAMPK(AMP-activated protein kinase)が細胞内エネルギーを消費する経路とエネルギーを生産する経路の主要な調節因子であることが示された。このAMPKが骨格筋内でグルコース輸送を導くエネルギーセンサーとして機能しているようである。そこでAMPK(AMPKα1、AMPKα2)が分岐鎖アミノ酸によってどのような調節を受けているのかを調べた。その結果、イソロイシンを投与した場合はAMPKα2の活性が減少し、ロイシンはAMPK活性に影響を及ぼさなかった。以上のことから、分岐鎖アミノ酸のグルコース取り込み促進機構にAMPKは直接関係していないことが示された。
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