2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホタテガイのGnRHニューロンによるビテロゲニン合成と精子形成促進調節の分子機構
Project/Area Number |
17580153
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾定 誠 東北大学, 大学院農学研究科, 助教授 (30177208)
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Keywords | ホタテガイ / GnRH / ビテロゲニン / 精原細胞 / エストラジオール-17β |
Research Abstract |
1.GnRHニューロンの分類と支配領域の特定 抗mGnRH抗体で、雌雄の足部神経節と頭部神経節に局在する中型のニューロンに特異的な陽性反応が認められた。このニューロンはタイ型GnRHに対する抗体に特異的に染まったことから、視索前野を支配するタイ型GnRHに分類された。また、一部の大型のニューロンにも陽性反応が認められ、ホタテガイのGnRHには2タイプ存在する可能性が示唆された。さらに、中型のGnRHニューロンから派生する神経線維は中枢神経内に留まり、生殖巣には認められず、その伝達経路として、血リンパ(血液)を介した神経内分泌の可能性が推察された。 血リンパを血球溶解質と血清に分けて卵巣と精巣組織培養系で検討した。Vtgタンパク翻訳は血球溶解質と血清ともに促進し、特に血清により強い促進効果が認められた。一方、精原細胞増殖は雌雄両方の血球溶解質にのみ強く促進され、血清にはまったく無かった。2タイプあると推測されるGnRHのうち、抗mGnRH抗体で陽性反応を示すGnRHニューロンからは雌雄に共通して血球で運ばれ、雄では精原細胞増殖を、もう一つのタイプのGnRHは血清で運ばれ、雌でVtgタンパク翻訳を強く促すと考えられた。 2.GnRHニューロンによるステロイド合成の支配 中枢神経抽出物とmGnRHは精巣ではプロゲステロンとテストステロンの減少をもたらし、最終産物であるエストラジオール17βの増加をもたらした。卵巣でも精巣ほどではないが多少のエストロゲンの増加が認められた。さらに、最終産物であるエストラジオール17βはGnRHと同じように精原細胞増殖を強く促した。すなわち、血球で運ばれるGnRHは卵巣・精巣のエストロゲン合成細胞を刺激して、精巣では分泌させたエストラジオール17βが精原細胞に働いていた可能性が示唆された。卵巣で中枢神経由来のペプチド性因子やmGnRHが弱いながらもエストラジオール17βと同じようなVtg転写活性を上昇させる傾向にあって、血球溶解質にも弱いながらもVtgタンパク翻訳促進を認めたのは、卵巣にも血球で運ばれるGnRHによるエストラジオール17β分泌刺激を介したGnRHによるVtg転写促進が考えられた。 これらのことから、中型のニューロン由来のGnRHは血球を介して生殖巣でエストロゲン合成を促し、精原細胞増殖とVtg転写を促進し、一部の大型のニューロン由来のGnRHは血清を介してVtgタンパク翻訳を促進しているのではないかと推察された。
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