2005 Fiscal Year Annual Research Report
有害物質を含む水産加工残滓の低コスト再資源化と環境汚染防除法の検討
Project/Area Number |
17580158
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
任 恵峰 東京海洋大学, 海洋科学部, 助手 (00345406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 哲仁 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (00173013)
後藤 純雄 国立環境研究所, 循環技術システム研究開発室, 室長 (30112890)
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Keywords | 水産加工残滓 / カドミウム / 生物資源の再利用 / 環境汚染防止 |
Research Abstract |
生物資源としての価値が全く活かされず、環境汚染を悪化させる恐れがある水産加工残滓ホタテウロを対象に、初年度にはまず、生物資源としての利用が可能な有用部分と、有害重金属カドミウム(Cd)の分離条件を検討した。 1 自己消化法:生ウロとボイルウロを1:1で配合し50℃、15時間で完全に液化できる至適自己消化条件を明らかにした。液化したウロを(1)自己消化液1kg当たり、Sとして200mgを含む硫化物を添加、(2)ポリ塩化アルミニウム(10%PAC)は100mL/消化液1kgを添加、(3)pHは6〜7、(4)低速遠心分離という条件で処理した。得られた試料をCdおよび全窒素量を測定したところ、それぞれ上澄から0.16ppmと0.85%、凝集沈殿物からは17ppmと1.98%が検出された。この上澄は有機肥料の素材として十分に使えるが、Cdを17ppm以上も含む凝集沈殿物の体積が大きいことの外に、この沈殿物中に有用な有機成分がまだ多量に残存するという欠点が残されていた。 2 弱酸洗浄法:そこで上記の欠点を克服するため、弱酸(クエン酸、酢酸)水溶液でウロを洗浄する至適条件を検討した。(1)ウロをミキサで粉砕後、弱酸水溶液を加え、80℃で10分間加熱し低速遠心分離した。(2)得られた洗浄ウロにさらに2倍量の弱酸水溶液を加えて洗浄した。この洗浄操作を計3回実施した。洗浄ウロでは、洗浄回数および酸濃度の増加に伴って残留Cdも全窒素も減少したが、2%酢酸で4回洗浄した洗浄ウロでは、Cdが0.98ppmに低下し、全窒素は1.52%であった。これをそのまま使用しても、Cdは肥料取締り規則の規制値以下に納まることが確認できた。Cdの大部分が移行した4回分の洗浄液を合一濃縮後、上記自己消化法の(1)〜(4)と同様に処理したところ、残存Cdは液体中で0.45ppm、凝集沈殿物中では32.2ppmであった。 両種の酸のうち特に酢酸はこれまで実施例の報告がないが、次年度は薬剤価格が安価で、最終製品からの除去も容易という特長を持つ酢酸に着目し、洗浄ウロ中の酢酸を除去するための簡易法の検討、高濃度Cdを含む凝集沈殿物の処理方法、洗浄ウロを有機肥料として利用するための具体的方法の検討を行う予定である。現在の処理法で起こる大気および土壌環境への汚染を最小限に食い止め、限りある水産生物資源を有効に利用すると同時に、産業廃棄物再利用システムを確立するための基礎的条件を明らかにしたい。
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