Research Abstract |
本研究は,鹿児島湾の低利用資源,Plesionika semilaevis(以下,ジンケンエビ)を地域特産資源として有効利用し,漁村活性化をはかるために,水産資源生物学,食品加工・品質管理学,海洋社会科学それぞれのアプローチに基づく研究で得られた知見を統合・整理して地域に提供することを目的とする。今年度の各アプローチによる実績の概要は以下の通りである。 水産資源生物学的アプローチ:鹿児島大学水産学部付属練習船南星丸を用い,同湾において定期定点試験底曳網調査を行って可能供給量の模索を行った。その結果,本種は採集された甲殻類の最優占種で,湾中央の最深部に集中的に分布することがわかった。曳網10分間当たりの採集個体数は672〜7452個体で,周年出現した。 食品加工・品質管理学的アプローチ:本種は生食の他,加工用食材として有効利用が期待できるが,殻(外骨格)むき作業に手間がかかる上に,現在は安価で取り引きされている。また,殻付きのまま加工品の原料とした場合,食感はザラつき感がある。そこで,殻の軟化処理方法を試みた。その結果,殻の軟化が認められ,味覚への影響と,処理中に予想される生鮮度低下においても対処法を考慮することが可能となった。これらの詳細については,特許申請に向けて明細書作成中である。 海洋社会科学的アプローチ:当該漁業者や漁協が主体的にマーケティングに参加し,地域資源の有効利用を達成する条件を探るために,各地でヒアリング調査を行った。その結果,時間的制約により販売活動よりも生産活動を優先せざるを得ない小生産者の特質や,限られた流通業者が参加する競りでの価格以外の市場情報を得難い,流通システム上の問題の存在が明らかとなった。流通業者と漁業者のコミュニケーションシステムの実態把握が今後の課題である。 来年度は,漁獲→加工→流通のシステム構築に向けて,実践的な研究を展開する予定である。
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