2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
沖野 龍文 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 助教授 (30280910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 育子 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 客員研究員 (50381447)
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Keywords | ウニ / ナマコ / 変態誘起物質 / Ulvella / アワビモ / 種苗生産 / ドーパミン / フェニルアラニン |
Research Abstract |
棘皮動物幼生の着底・変態に関与する化学物質を明らかにするために、水産有用種であるナマコとウニの幼生を用いて実験を行った。 まず、ウニ種苗生産現場で幼生の変態を誘起するために用いられている緑藻アワビモUlvella lens水抽出物から昨年度変態誘起物質として同定したフェニルアラニンについて、その幼生に対する作用を詳細に検討した。フェニルアラニンは5μMで変態誘起活性があったが、アワビモによる変態と異なり幼生の腕の組織の退縮を進める作用が強く、別の活性本体の存在が示唆された。そこで、アワビモの培養海水の有機物質を調べたところ、管足の出現を促進させ、変態を誘起する画分を同定することができた。Ulvellaによるウニの変態現象には単独の物質ではなく複数の物質が複合的に関与している可能性が高い。 ナマコ幼生の変態誘起物質を生理活性物質から探索したところ、ドーパミン、L-DOPA、L-アドレナリン、L-ノルアドレナリンに変態誘起活性が観察された。特にドーパミンに強い活性が認められた。これらの化合物はおおよそ10^<-5>M程度で他の無脊椎動物幼生の変態を誘起する。これら4種の化合物すべてが活性を示した例はなく、興味深い。しかし、アワビモを用いた変態と変態開始の時間が異なることから、アワビモによう変態は別の化合物が関与している可能性が高い。 本研究で対象としたウニとナマコはいずれも緑藻Ulvella lensの付着板により幼生の変態が誘起される。その現象を化学物質により完全に再現することはできなかったが、変態誘起現象のメカニズムにより迫ることができた。
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