2006 Fiscal Year Annual Research Report
海産軟体動物タンパク質架橋酵素の共通分子構造と生理機能発現機構の解明
Project/Area Number |
17580177
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
埜澤 尚範 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 助教授 (20221484)
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / ホタテガイ / 創傷治癒 / TGase / 血リンパ / エラ / ミオシン / 架橋 |
Research Abstract |
架橋酵素は,魚介類の筋肉タンパク質であるミオシン分子と反応するので,酵素の基質認識部位について基礎的知見を得る目的で,ミオシン分子をモデルとして,タンパク質分子中の反応部位(架橋部位)アミノ酸の同定を試みた。 コイ普通筋ミオシンに,蛍光性アミンMDCを取り込ませBrCN分解を行なった結果,蛍光は主に10.5kDa断片に検出された。この断片のN末端アミノ酸配列を分析した結果,ミオシンS2領域のAsn(436)残基から始まるペプチド断片(NAQRA-)であることが分かった。しかしこれ以外にミオシンS1領域にあるペプチド断片(ENFLV-)が混在していた。そこで,この10.5kDa断片をAP-Iで消化し,逆相HPLCカラム(C18,4.6 x 150mm)に供した結果,単一の蛍光ピークが検出された。このピークをさらに逆相HPLCカラム(C18,2.1 x 150mm)で精製し,アミノ酸配列を解析したところAEL(Q)RGからなるペプチドであることが明らかになった。この配列は,ミオシンS2領域の517-522残基の配列と完全に一致していた。このペプチドの4残基目のQはシーケンサー分析でシグナルが検出できなかったことから,MDCが側鎖に結合したGln残基であると推定された。 以上の結果から架橋酵素TGaseによってMDCはミオシンS2領域のGln(520)残基に主に取り込まれることが明らかになった。S2領域は533残基よりなるので,S2領域のC末端域に取り込まれることが分かった。MDC存在下ではTGaseによるミオシンの架橋形成が阻害されることから,このGln(520)残基が架橋形成に関わっており,この残基の近傍にあるLys残基との間で分子内架橋形成が起こることが推測された。今後,他種のミオシンとの反応性を解析し,基質タンパク質の構造共通性について検討する必要があると思われる。
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