Research Abstract |
【目的】近年,日本各地での水産物のブランド化が活発に行われている。中でも大分県産関サバは代表的な存在であり,その肉質の優位性に関する研究例も報告されている。そこで本研究では関サバの生息環境に注目し,潮の流れの速さが肉質に与える影響を明らかにするため,マダイを用いて飼育実験を行った。 【方法】直径2.3mの円柱型水槽の中で給水量を一定にすることにより,水槽中央部が流速14cm/sになるように流れを作り,マダイの運動飼育を行った。対照区では止水とし,流速ほぼ0cm/sで飼育した。飼育期間は4ヶ月間とし,即殺時および死後24時間後の背部普通筋について,破断強度,ATP,グリコーゲン,コラーゲン,ミオグロビン,一般成分を定量するとともに,光学顕微鏡により筋細田胞の構造を観察した。 【結果】破断強度:即殺時の1ヶ月と4ヶ月では運動飼育よりも対照飼育の強度が有意に高かった。筋細胞の観察:細胞断面積は飼育期間の延長にともなって増加したが,試験区間での差異は見られなかった。細胞間に生じた間隙は1ケ月飼育・死後24時間で有意差が見られた。ATP量:即殺時の対照区に多くなった。グリコーゲン量:即殺時の数値が飼育期間の延長にともない増加した。コラーゲン量:開始時が最も多く,その後減少した。ミオグロビン量:2ヶ月および4ヶ月後において運動区において多くなった。一般成分:粗脂肪が両区とも飼育期間の延長にともない増加したが,4ヶ月において運動区に多くなった。それによもない,水分の減少が認められた。 以上の結果から言えることとして,運動飼育によりミオグロビンが増加したものの,破断強度の強化にはつながらなかった。また,コラーゲン量は運動の多少に関わらず減少しており,合成の促進は生じなかったと思われた。結論としては,回遊性の魚種ではないマダイにとって,強制運動は必ずしも筋肉の強化にはつながらないと考えられた。
|