2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 芳宏 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40283650)
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Keywords | ドイツ農業史 / 農村入植史 / 土地改革 / 農業集団化 / 東ドイツ |
Research Abstract |
本研究は、農業入植政策と農業労働者問題の2つの問題系譜から戦前と戦後のドイツ農業の断絶と連続性を検証することを目的としている。本年は、とくに農村入植史に重心をおいた。 まず、入植史の研究動向については、日本はもとよりドイツにおいても事実上の空白域であった。近年になって、環境史的視角からの農業史の潮流の形成と人種的なナチス農村政策への新たな関心から、当該期の「農村空間計画」研究の活性化が見られるが、これらの研究では農村社会史的視点からの分析は弱く、また「開発思想による工業的な農村改造」理念の「ナチス→戦後東独」系譜の問題意識はないことを確認した。 次に戦後東独の農村入植史について、とくにロストク県のケーグスドルフ村の村文書によりつつ個別事例を検討してみた。戦後の東独農村は大量の難民を引き受けており、土地改革から集団化の過程はじつは農村入植過程でもあった。本村は難民の新農民層が村政の主導性を握るなど難民入植との関わりがつよい集落である。戦後入植政策のポイントは「占領軍命令209号」にもとづく新農民家屋政策であるが、本村では旧グーツ大厩舎は解体されず、逆にその掌握と有効利用が集団化発展の条件となっていた。また新農民家屋建設については計6件が着手されているが、このうち成功したのは資金力のある有力難民二件と他1件の3件に限定され、他は建設に困難をともなっていることから、あの独特の新農民家屋群が村の景観を代表するものとはなってはいない。以上の二つの点からみて農村空間は戦後「社会主義」政権のもとで単純に画一化されたわけではなく、むしろ政治的な観点から既存の村内の建築物資源の利用再編の方が優先されたといえる。その意味で少なくとも1950年代については戦前との連続性をなお語りうる余地があったことになる。
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Research Products
(2 results)