2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 芳宏 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40283650)
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Keywords | ドイツ農業史 / 農村入植史 / 東ドイツ / 土地改革 / 集団化 |
Research Abstract |
本研究は戦前と戦後のドイツ農業における連続と断絶のありようについて、農村開発・農村入植論の視点より分析することを課題とする。とくに本年は戦後東独の農村「開発」にかかわって1950年代のMTS(機械トラクターステーション)のありようをロストク県バートドベラン郡を対象に分析し、あわせてナチス期については戦時期の占領区ウクライナの農業改革構想について文献調査を行った。 戦後東独の土地改革は、戦後難民を含む個人農の入植過程という側面を持つが、経営的には個人農として完結していたのではなく、MTSの機械サービスを必要不可欠な条件としていた。MTSは1948年より設置されはじめるが、とくに1950年代初頭には、各郡のもとに数十か村を束ねるMTS管区がおかれ、その中核にMTS集落が位置した(当該郡では4つのMTS管区が設置)。しかもMTSは単なる機械提供サービスのみならず、管轄下の各村落を上から統合する政治的な拠点であり(MTS政治局の指導員が末端の党権力の実質的担い手として各集落の政治統合に影響力を行使)、さらには「社会主義」農村空間における文化的拠点とされた(「文化の家」の建設)。1955年以降は、LPG化の進展に随伴しつつ、MTS農業技師の農村派遣、有力集落におけるMTS支社の設立を通して、大規模機械化を前提とする「都市的農業集落」への実質的な転換が目指されていく。物的資源不足にっき、1950年代において「農村空間」の物理的な改変を語ることはまったくできないが、「社会空間」の変化という点からは、MTSはその後の「工業的な」LPG村落の空間形成に寄与したといえよう。 他方、戦時期についてはナチスによる占領地ウクライナの農業改革に関するGerlachの研究を知ることができた。それによればナチスは占領地のコルホーズ解体にあたっては、単純な個人農の復活をめざしたわけではなく、Otto Schillerによる「耕作協同組」構想を基礎においていたという。それは-ドイツへの強制労働者動員政策と一体化しつつ-、大型機械利用と個人農をミックスした非コミュニズム型の集団農業構想であったという。個人農と大型機械利用を前提とする新農村空間創出を目指すという意味で、ナチ占領地の農業改革構想は、戦後東独「社会主義」の農業構想に通じる側面があったのである。
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Research Products
(2 results)