2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア後発国における国際競争環境の激化と農村の貧困削減戦略に関する研究
Project/Area Number |
17580198
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 清一 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (90134197)
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Keywords | Value Chain 分析 / 輸出ライセンス制 / 賄賂 / 農村の貧困削減 |
Research Abstract |
今年度は、Value Chain分析を行うために必要な、価格データ、生産費、流通マージン、税関手数料、精米・製粉手数料、インフォーマルな国境手数料等の数量的データを収集するために、カンボジアのコンポンスプー州、タケオ州、シェムリアップ州、ラオス、ビエンチャン県において実態調査と収集した数量的データについてのデータ・ベース作成を行った。 また、これまでに、カンボジア、ラオス、タイにおいて、すでに収集済みのデータを用い、これら3カ国における米の農家庭先価格と小売価格、あるいは、国境価格を比較することにより、以下の諸点を明らかにした。 (1)カンボジアの場合、農産物の関税はゼロであるにもかかわらず、輸出ライセンス制や税関職員・警官による汚職により、タイやラオスに比べ生産費が低いにもかかわらず、農家手取り価格が低く、このため、農家の収益は必ずしも高くないこと。 (2)したがって、もし、税関職員や警官の汚職が削減され、精米、輸送等、ポスト・ハーベスト技術が向上するなら、農家の手取り価格は、大幅に増加し、それによって、カンボジア農村における貧困改善の有力な手段になりうること。 (3)ラオスにおける最大の輸出農産物である黄牛の場合、その粗放的生産技術により、生産費は極めて低いにもかかわらず、黄牛輸出に関する、輸出ライセンス制やラオス政府によるインフォーマルな規制が、牛の国内価格を押し下げ、農家手取り価格および、農家収入を抑制していること。 以上のように、H17年度における主要な研究成果は、Value Chain分析により、政府による不透明な介入が、農産物の国境価格を歪め、農家所得を押し下げる大きな要因になっていることを明らかにしたことである。なお、これらの研究成果の一部は、以下に示す業績等において公表している。
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