2006 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア後発国における国際競争環境の激化と農村の貧困削減戦略に関する研究
Project/Area Number |
17580198
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
福井 清一 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (90134197)
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Keywords | Value Chain分析 / 輸出ライセンス制 / 賄賂 / 農村の貧困削減 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度収集したカンボジア関係のデータの分析、および、ミャンマー、タイにおける貿易の自由化と、農業・農村への影響に関する情報収集を行った。 カンボジアにおいては、収集した家計調査のデータを用い、農産物価格の上昇が、農村の貧困層に及ぼす影響について分析した。そこでは、所得決定関数の推計結果から、農産物価格の上昇によって最貧困層に負の影響が及ぶ可能性があることを明らかとなった。このことは、経済統合が、必ずしも貧困層に恩恵をもたらすとはいえない事を示している。この結果は、本年中に学会で報告する予定である。 また、貿易自由化の影響は、所得だけではなく、農民の社会的厚生にも影響すると考えられる。そこで、別途、農村世帯における子供の、教育、健康・栄養状態に関するデータを収集し、生の家計調査データと合わせて、農産物価格や雇用環境の変化が子供の教育、健康や栄養状態にいかなる効果があるのかを分析した。この成果の一部は、神戸大学・国際協力研究科のWorking Paperとして刊行されている。 ミャンマー、タイについては、当初予定していたインテンシブな、国境地域での聞き取り調査が困難であったため、各国の研究者から二次資料収集を行うに留まった。 二次資料の分析によると、ミャンマーについては、従来からの主要農産物供出制度は廃止されたものの、軍事政権による、農産物の低価強制買い上げ、輸出入規制は、依然実施されており、以前と変わらない状況であるが、その一方で、ミャンマー、タイ両国とも密貿易が横行し、実質的に貿易の自由化が進展しているという実態が明らかとなっている。
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