2006 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム茶・ゴム産地における個別農民経営の成長と地域社会変容への影響に関する研究
Project/Area Number |
17580201
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
辻 一成 佐賀大学, 農学部, 助教授 (00253518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 講師 (60301355)
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Keywords | ベトナム / 茶 / 天然ゴム / 農業開発 / 地域社会 / 環境 |
Research Abstract |
平成18年度は,北部の主要茶産地(タイグェン省)での行政機関・農家調査と南部のゴム産地(ビンズォン省)のゴム生産農家及び調査を実施した。 今回の調査研究によって得られた知見の概要は次のとおりである。 (1)タイグェン省タンクォン社(村)は,1920年に設立された行政村であり,北部ベトナムの中でも最も知名度の高い茶産地である。同社は各100戸程度からなる16の集落で構成されており,各集落での茶生産技術の程度は,若干の標高差や灌漑条件の違いなど,自然的条件やインフラ整備の状況の差異によって異なる。 (2)同地の茶栽培は,社の設立前後から開始された。以前は,米とキャッサバなど自給穀物の生産が中心であったが,1919年以降,デルタ地域からの大規模入植の開始とともに地域の自然環境に適した茶栽培が伸長していくことになった。 (3)水田・果樹園からの転換による茶園の増大や個別化の進展に伴う地域共有林(山)の土地利用は大きく変化していきている。個別管理に移行した山林では補助政策による植林事業等も進められているが,頻繁な盗伐の発生など,山林管理の在り方が課題になっている。また,化学肥料等の多投による地域の水資源(水質)にも影響があると指摘されており,地域住民の健康被害との関連が懸念され始めている。 (4)ビンズォン省フーザオ県は天然ゴム産地の一つであり,近年における比較的安定した天然ゴム国際市場環境の下で,モノカルチュア化が進展している。 (5)天然ゴム生産農家には,小規模農民的経営,中規模雇用依存型経営,大規模資本家的経営など,多様な経営形態がみられるが,これらの中で収益性における極めて大きな階層間格差が生じている。 (6)天然ゴム生産の比較的高い収益性を背景として,都市非農家や海外在住者による投機的土地取得が拡大し,農業の収益還元地価を遙かに上回る地価高騰が形成され,小規模農民的経営や中規模経営の規模拡大機会を喪失させる状況が生じつつある。 (7)天然ゴム生産経営の雇用労働者の賃金水準は極めて低位であり,地域における余りに大きな所得格差の発生は,地域社会の不安定化要因として強く作用する懸念を孕んでいる。
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