2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17580208
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
西澤 栄一郎 法政大学, 経済学部, 助教授 (30328900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 道明 東北大学, 大学院農学研究科, 助手 (70312626)
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Keywords | 家畜糞尿 / 環境政策 / 影響評価 / 窒素・リン / オランダ |
Research Abstract |
オランダのミネラル収支制度(MINAS)の実績を把握し、その経済的影響と環境への影響を明らかにすることと、2006年から始められた新しい家畜糞尿規制について概要をとらえ、予想される影響について検討した。オランダ中央統計局のデータ、各種報告書、さまざまな雑誌論文にあたった。オランダ語資料のうち、重要なものについては英訳を翻訳会社に依頼した。これまでに明らかにしたことについて、畜産関係の学術誌に投稿した。 日本の影響分析については、複数の畜産農家に対して聞き取り調査を行った。また、環境への影響に関して、東北大学で研究分担者が次ページに掲げた英語論文で提案したシステムを応用し、農村地域での畜産廃棄物の受け入れ先を検索およびコーディネートする仕組みをつくるソフトウェアシステムを開発した。 これまでに明らかにしたオランダの状況は以下のとおりである。 MINASの導入後、糞尿発生量や養分の超過投入量(投入量-吸収量)は減少しつつあるが、水準自体はまだかなり高く、目標とする水質を実現するためには一層の削減が必要である。硝酸塩濃度は、農場内の浅層地下水で改善の兆しがみられるものの、砂質土壌では広い地域でEUの目標値である50mg/lを超えている。地下水のより深いところでは対策の効果が現れるまでには時間がかかる。同様に、土壌に吸着しやすいリンは、これまでの蓄積量が多いため、表流水中のリン濃度は改善されていない。また、河川や海洋の水質は、国外起源の負荷量が大半を占めることもあって、対策の効果が現れていない。 しかし、2003年10月に欧州裁判所は、この制度が欧州連合(EU)の硝酸塩指令に違反しているという判断を下した。このため、オランダは2006年から窒素とリンの投入量を規制する施用量基準に移行した。新制度では、窒素換算の糞尿施用量、窒素の総施用量、リン酸の総施用量の3つについて基準(上限)が設定される。糞尿の撒布に関する規制についても、撒布禁止期間の延長、糞尿保管施設の設置義務の強化、水路付近での施肥・急傾斜地での施肥の規制強化などが行われる。新しい施用量基準は、MINASに比べて厳しい規制である。導入当初は窒素のように収支がすぐには改善しないものもあるが、基準の強化によって環境負荷は減っていくであろう。しかし、畜産経営の所得は減少する。MINASの課徴金支払いはなくなるが、糞尿処理費用は増加する。施用量基準への移行によって、規制システムが簡素化されるとされているが、養豚・養鶏経営では以前と同様農場単位で窒素とリン酸の収支を計算することが必要である。MINASは農業者に不評だったが、新しい制度が農業者に受け入れられるか、また行政費用が低下するかどうかはそれほど明らかではない。
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Research Products
(3 results)